30. 小人

世界各地の伝承・物語に登場する、小型の人・神・妖精。日本では、神話の少彦名命。アイヌのコロポ(ボ)ックルが有名。

昔話の一寸法師、童話『白雪姫』の7人の小人、『小人の靴屋』、『ガリヴァー旅行記』のリリパットムーミンも実は電話帳サイズ! 最近では、〈ジブリ〉が映画化したイギリスの児童文学『借りぐらしのアリエッティ』もあった。

前述の『白雪姫』の小人ドワーフ。ドイツでは、醜い老人の姿で、寿命は10歳程。男だけで、石から出来ているという。J・R・R・トールキンの『指輪物語』でも有名。中つ国では背の低い頑健な種族で、石工や鍛冶を生業とする。

そのドワーフの嫌うエルフ、イングランドのピクシーや、アイルランドのレプラコーン、北欧のトロールノームニッセ等は、小さな妖精たち。

さて、前述のコロボックルは、アイヌの言葉で「蕗の葉の下の人」の意味。アイヌ以前に北海道に住んでいたと思われる背丈の低い種族で、漁が巧み、蕗の葉で葺いた竪穴を家とした。その為、別名のトィチセウンクルトンチは、「竪穴に住む人」の意。友好的だが、人に見られることは嫌った。かつては、アイヌと共存していたが、ある時アイヌの無礼に怒り、北の海の彼方に去ったという。その時の呪いの言葉「トカップチ(水は枯れ魚は腐れ)」が、十勝の地名となった。

夏目漱石の『菫ほどな〜』の句から生まれたのが、日本初のファンタジーと言われる、佐藤さとる『コロボックル物語』。ここでは、少彦名命の末裔という設定。

描いたのは、探検家・松浦武四郎の『蕗下コロポックル図』。

菫ほどな小さき人に生まれたし夏目漱石