「小豆とごうか、人とって食おうか、ショキショキショキ…」妖怪、小豆とぎである。音に気を取られて川べりから滑り落ちた者はいるが、実際食べられた話は無く、その姿を見たものもいない。東京・京都・広島・大分…と、全国に伝わり、佐渡では、この音を聞いた娘は早く産気づくという。新潟では、物を数えるのが上手だった殺された小僧の霊だとする。ここ愛媛では砂洗いと呼ぶ。
音の妖怪は多い。長野の米とぎ婆、静岡の洗濯狐、古い屋敷にいて大声を出すうわん、夜中にコツコツと餅の粉をはたく音をさせる静か餅は、聞くと長者になれるという。法螺貝を吹き鳴らす貝吹き坊、山中で木を倒す音を立てる古杣は死んだ樵の霊と言われる。天狗倒しもこれとよく似る。海外では、前に触れたポルターガイストのラップ音がある。
マヤ暦が終わると騒いでいた2011年の10月頃YouTubeで、終末音=アポカリプティックサウンドが話題となった。同様の正体不明の音はデンマーク・ウクライナ・インドネシア・イギリス・日本…と、世界各地で発生。カナダでは音のする方向が判断できない、大音量の下手なラッパのようだったという。それは、『旧約聖書』の『ヨハネの黙示録』に描かれる、7人の天使が吹き鳴らす終末のラッパを多くの人々に思い起こさせた…。中国貴州省堅強谷のそれは竜の鳴き声だと言われた。
NASAは、大気中の放電が原因ではと推測。また、地震につながるプレート音とも言われた。高知浦戸にも孕のジャンなる妖かしがある。海上で「ジャン」という音がすると、魚が全く捕れなくなるという。パッと明るく光るとも。寺田寅彦は、この土地に多い地震との関連性を指摘した。
”小豆洗い“そんな季語あるの あるよ風来松