153. 蛙

他の生き物にもよくあるが、蛙も不吉とされたり幸運を呼ぶとされたり、悪魔とも神ともされてきた。

『古事記』に登場する葦原中国の一柱多邇具久(タニグク)は、蝦蟇。少名彦命がやってきた時、「かかしの久延毘沙古なら誰か知っているだろう」と言う。蝦蟇はどこにでも生息している為、国土の隅々まで知っているということらしい。島根県松江市の〈美保神社〉に祀られている。

中国の道教には、青蛙神(セイアジン)信仰がある。これも、青蛙というが、蝦蟇らしい。後ろ脚が一本で、天災を予知出来る蛙で、月に棲んでいたのを、蝦蟇仙人が金貨で釣り上げて従えた。金運の縁起物とされている。

南米でも同様に、蛙は金運を招くと言われる。

エジプトには蛙頭の女神ヘケトがいて、生命・出産を司る。

ドイツでは、魂が水底と地上を循環するという伝承から、蛙を人の魂のメタファーとする。

一方、アイヌでは蛙は不吉な生きものとされる。中世キリスト教圏でも、死・吝嗇など不浄のシンボルに。

悪魔にもヒキガエルの姿のバエルがある。東方を支配する序列一番の大物だ。蜘蛛の体に、人間・猫・蛙の三つの頭の姿で描かれるものも。

現実世界でも、「悪魔のカエル」と呼ばれる〈ベールゼブフォ〉は白亜紀のマダガスカルにいた20cm大のカエルで、恐竜の幼体を捕食していたという!

妖怪では、山口県岩国山の大蝦蟇。体長約2.4m。槍を持ち、人を襲う。口からは虹のような気を吐き、これに触れたものは全て食べられるという。新潟県村松にも釣り人が大岩と間違えるほどの、大蝦蟇が出現した。

UMAでは、アメリカ・オハイオ州のフロッグマン。1955年頃から、度々目撃されている12本足で立つ1mくらいの蛙という姿。

江戸時代の草双紙に登場する児雷也は、肥後国の忍者。越後妙高山の仙素道人から教わったガマの術を使う。妻はナメクジの術綱手、ライバルは大蛇丸で、これが「三竦み」。モデルは義賊自来也で、もとは宋の盗賊。犯行時、壁に『我来也』と書き残した事による。これとよく似ているのが描いた天竺徳兵衛。歌舞伎では、日本転覆を目論む妖術使いで、大明国の遺臣の子。ただモデルはヤン・ヨーステンと共に朱印船でインドまで行った、商人探検家である。

ちなみにこの夏公開の、村上春樹原作のフランスのアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』に登場するカエルくんは世界を救う事となる。

わが蝦蟇でどろんいたそう忘年会風来松