まず思い出されるのが『三枚のお札』の便所の神様。代返して、鬼婆から逃げる時間を稼いでくれた! 青森・秋田・長野・愛知・新潟・埼玉等に伝わる昔話。1980年頃には、トイレの花子さんが現れた。全国各地に様々なバージョンが語られる学校の怪談系の都市伝説。基本的なパターンは、学校の3階のトイレで3番目の扉を3回ノックして呼びかけると現れ、トイレに引きずり込まれるというもの。赤いスカートのおかっぱの女の子の姿。1950年頃から既に流布していて、更に遡れば、江戸から昭和初期まで盛んに信仰された厠神に行き着く。厠に赤・白の人形や美しい花を飾った。2010年には植村花菜の『トイレの神様』がヒットした。鹿児島の和泊町手々知名に住む彼女の祖母(大久保利通の血筋!)に聞いた、「トイレをきれいにすると美人になる」という言い伝えが元らしい。
妖怪の筆頭は、加牟波里(がんばり)入道(何だこの名前?)。便所に現れて、のぞき込んだり、息を吹きかけたり、尻を撫でたりする。『今昔画図続百鬼』には、下半身が煙のような姿で描かれ、大晦日に「がんばり入道郭公」と唱えるとこれに会わない...とある。姫路では、これを唱えて落ちてくる生首が黄金になると言われ、『甲子夜話』にも同様の話が載る。一方で、唱えるのは不吉とする地区もある。中国で、厠で郭公の声を聞くのは不吉と言われるのが元か。岡山落合では、便所に裸で入ったり、咳払いをせずに入ると、これが出るという。和歌山の雪隠坊もよく似ており、便所を覗いたり、手を出したりするが、鳥のような声。かいなでも、便所で尻を撫でてくるが、こちらは毛むくじゃら。京都では、夜中に便所に行くと出るとされ、「明日からは来ません」と頭を下げれば良いと言う。宮城では「赤い紙やろか、白い紙やろか」と言ってくる。河童が尻を撫でる話も多い。
さて、冒頭で書いた便所の神様は、男女一対の紙雛だったり、青柴だったりする。昔は、子供が生まれると生後三日目に「雪隠参り」して、お産の無事を祈る習わしがあった。中国の道教の紫姑神(しこしん)は、則天武后の時代に、その美貌から厠で殺された紫姑がなったという厠神。正月十五日、彼女を形どった人形が、予言をしてくれる。
描いたのは、烏枢沙摩明王。火神厠神で、その烈火で不浄を転じて清浄とする。有名な象の頭のガネーシャを調伏する姿で描かれている事が多い(ガネーシャは元々疫病をもたらす悪神だった)。
筆者の生家は、かって〈ぼっとん便所〉だったが、深くて暗くて、何より落っこちそうで怖かった...!
水澄むやここにもおるでユビキタス風来松