夢に関する妖怪は、意外にも前に書いた貘くらいしかいない。後は、枕神といって、夢枕に立ち御神託をくれる神様くらいか。
夢占いならよく聞く。有名なのは、初夢の「一富士二鷹三茄子」。茄子は「成す」。その後もあって、四扇(広がる)五煙草(上がる)六座頭(けがない)と続く。火事、葬式、馬の夢も吉。蛇も良いが、3日間は人に話してはダメ。逆に、親、歯が抜ける、産まれる、お金を拾う、牛といった夢は凶という。
一方、海外にはたくさんいる。
『ギリシャ神話』では、モルペウス・ポベートールの兄弟神が夢の神。兄は夢を形づくり(モルヒネの語源)、弟は悪夢を生む。
夢魔と呼ばれる、下級の悪魔・男のインキュバスと女のサキュバスは、夢に入り込み性交する事から淫魔とも。前者は子を孕ませ、『アーサー王物語』のマーリンも、そうして産まれた。後者は、最初の女リリスや、その子リリンとも関連付けられる。牛乳を置いておくと避けられるという。
ドイツのアルプもこれと似た存在。
ゲルマンの悪霊・メアは眠っている人の上に座り悪夢を見せる。「Nightmare=悪夢」の語源。ゴブリンのように醜い姿とされるが、クロアチアでは美女だとも言われる。
これらの悪夢を捕らえることが出来るのが、ドリームキャッチャー。北米インディアン〈オジブワ族〉の魔除けで、柳の枝に糸を張り蜘蛛の巣に見立てている。蜘蛛の女神・アサビケシからきている。〈スー族〉でも、蜘蛛の男神・イクトミがドリームキャッチャーを伝えたと言われる。インディアン同士の友好の証となっていったが、ヒッピーも模造品を作り始め、世界に広まった。
悪夢ではないが、ヨーロッパのサンドマンは眠りの妖精で、子供らの目に魔法の砂を振りかけて眠らせ、夢を見させる。
また、イギリスの妖精界の女王マブも似ている。彼女の乗る、小粒程のハシバミの実の殻で出来た馬車が人の鼻先を通ると、夢を見るという。この話は『ロミオとジュリエット』でも登場した。また、寝ている間に髪がほつれるのも彼女の仕業。
創作でとなると、夏目漱石の『夢十夜』、塚本晋也の映画『悪夢探偵』が思い出される。しかし、なんと言っても絵に描いた『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーが第一人者だろう! ヤツのあとを継ぐ存在がUMAというか都市伝説の、複数の人の夢に現れるというthis manか。
春泥を堕ちてく夢をみてる夢をみてる夢を…風来松