319. 車

火車は、葬式や墓場から死体を奪う妖怪猫又が正体とも言われ、カシャ猫とも(『不思議の国のアリス』のチェシャ猫みたい! ちなみにチェシャーは作者のルイス・キャロルの出身地で、他にも「そこに山があるからだ」の登山家ジョージ・マロリーも輩出!)。葬儀で、棺桶を吹き飛ばすと言われるので、山梨県上九一色村では棺の上に石を、愛媛県八幡浜では剃髪を置く。元は、罪人を地獄へ送る獄卒の曵く車で、「苛責」という言葉にも繋がる。

片輪車は、京東洞院通りや、近江甲賀に、夜な夜な現れた炎に包まれた片輪のみの牛車で、美女(もしくは恐ろしい男)を乗せて走り、見る者に祟ったという。何故か子供の被害が多い。これを元に鳥山石燕が『今昔図続百鬼』に描いたのが、輪入道とされる。実写版『ゲゲゲの鬼太郎』では、故西田敏行が演じた。

朧車は、牛車に大きな顔が乗る。『源氏物語』で、六条御息所に敗れた葵の君の怨念という説は、そもそもフィクションという点が面白い!

さて、では現代日本では…というと、残念ながら見当たらなかった。しかし、車大国アメリカとなると、呪われた車の話がゴロゴロとある! 有名どころでは、ボニーとクライドの1934フォードV8。今もネバダ州のカジノに展示されているが、幽霊の目撃例が。ミシガン州の〈フォード博物館〉のリンカーン・コンチネンタル・プレジデンシャル・リムジンにも、暗殺されたジョン・F・ケネディの幽霊が現れる。ジェームス・ディーンが事故死した時乗っていたポルシェ550は、その後も相次いで事故を起こし、現在は行方不明。ディーンが事故に遭う直前、サー・アレック・ギネスが「これに名乗ると1週間以内に死ぬかもしれない」と予言したらしい! オビ・ワン・ケノービ!? リアル、フォースか?? アメリカではないが、第一次世界大戦の引き金となったオーストリア大公暗殺時のリムジンも、その後13人の死者を出したという…。

ゴーストカーは、ドライブレコーダーに映り、いきなり出現したり、フェンスをすり抜けたりする。

そういえば、子どもの頃から、霊柩車を見たら親指を隠してきた。そうしないと、親の死に目に合えないと聞かされた。これ実は、古来より親指にはの入口があると言われた事に由来する。葬儀でも行われ、江戸時代の火葬場までの行列である〈野辺の送り〉でも。最も今では、あのお神輿のような霊柩車自体、あまり見かけないが(海外の物好きには売れてるらしい…)。

さて、描いたのは、スティーヴン・スピルバーグの若き日のテレビ映画『激突!』。追い抜いた1台のタンクローリーに執拗に追いかけられるという、シンプルなストーリーだが、手に汗握って何度も見た。『日曜洋画劇場』で、淀川長治が「あの車が、だんだん人の顔みたいに見えてくる。コワイ、コワイ!」なんて言っていた。主人公のメガネ・赤鼻のおっさんが、当時の小学校の担任の先生に似ていたのを思い出して、句にしてみた。ちなみに、我が母校は正岡子規も通った〈番町小学校〉。メガネの担任は、その後校長になったらしい。

逃げ水や『激突』の男担任似風来松