228. ウェンディゴ

カナダ南部からアメリカ北部のネイティヴアメリカンに伝わる、冬の魔物

一人旅の者の背に忍び寄るが、決して姿は見せない。何日かすると、はっきりしない声で話しかけてきて、それは旅人が耐えられなくなるまで続く。憑かれた旅人は、食人衝動に駆られ、更には自分自身がウェンディゴなのではという恐怖に取り憑かれてしまう…! その姿は、人より大きい(もしくは小さい)、雪男霊体・鹿の死体のような怪物等と言われる。また、正面からしか見えない程、厚みが無いとも。ただ、妖怪あるあるで、決して姿を見せないはずなので、結局その正体は不明…。

もしくは…北米のオジブワ族、アルゴンキン語系インディアン等に見られる、〈文化依存症候群〉の精神疾患のひとつ、〈ウェンディゴ症候群〉。19世紀だけで、70例が報告されている。主な症状は、気分の落ち込みと、食欲低下に始まり、やがてウェンディゴに憑かれたと思い込むようになる。更にこれに変身してしまうと思い始めてしまう! 不安や恐怖と共に、周りの人が食べ物に見え始め、猛烈に人肉が食べたくなる…。部族内で、これに罹った者は、処刑されるか、自殺するというケースが多い。治療もないわけではなく、ウェンディゴの心臓は氷と考えられる事から、火の側に座らせ、熱した熊の肝を食べさせる、大量のアルコールを飲ませる等の方法で、回復した例もある。原因は、食料不足やビタミン不足と考えられるので、あながち間違ってはいない。〈文化依存症候群〉は、とある文化環境が要因となる。つまり、ウェンディゴの伝説を知っているからこそ罹るという考え方だ。

このウェンディゴ、御当地では、『ウェンディゴの怖い話』という人狼ゲーム系のボードゲームになっていたり、イギリスのアルジャーノン・ブラックウッドが小説にしていたりする。また、ラヴクラフトの『戸口の彼方へ』というウェンディゴを題材とした小説の主人公の名前はトニー。ウェンディゴの鹿っぽい姿といい、『ONEPIECE』のトニートニー・チョッパーのモデルなのは間違いないと思うが…。

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