113. 呪文

呪術において、祓い・寿ぎ・呪詛等の効果を得る為に使われる言葉。直喩・隠喩・無意味な言葉等の決まり文句の反復が多い。呪具を併用する場合もある。

ニューカレドニア・ソロモン諸島・フィジー・パプアニューギニア等のメラネシアでは、現在でも日常生活の中で普通に使用されている。ドロブリアンド島では、戦い・農作業・カヌー作り等、何かをしようとするほとんどの場面で呪文を唱える。

日本でも、密教・陰陽道・修験道等で多用される。

最も有名な呪文は、「ちちんぷいぷい」だろう。ほとんどが、幼い子に対し「痛いの痛いの飛んで行け〜!」とセットで使われる。元々は「知仁武勇御代の御宝」からという説がある。

仏教系の「なんまいだぶなんまいだぶ」(南無阿弥陀仏)、「なむさん」(南無三宝)もよく知られる。「くわばらくわばら」は雷除け。菅原道真の住んでいた、京の桑原に雷が落ちなかった事からとも言われる。

密教の真言、「オンキリギャクウンケンソワカ」、「臨兵闘者皆陣烈在前」。

死者蘇生の言霊『布瑠の言(ふるのこと)』である「ひとみよいつむななやここのたりふるべゆらゆらとふるべ(一二三四五六七八九十布留部由良由良布留部)」。

陰陽道の悪鬼祓いの「きゅうきゅうにょりつりょう(急急如律令)」は、元は中国・漢の公文書の末尾に記されていた。

西洋では、手品師や魔術士の使う、「アラカザン」、「ホーカスポーカス」。

悪魔関係では、やはり「エロイムエッサイム」。魔術書『グリモワール』の大奥義書異本『赤龍』にある召喚呪文。「アブラカタブラ」も、アレイスタークロウリーが偉大な力を持つとしてしまったが、元はローマ帝国の昔の医師の詩集に載る言葉。御守りに書いて治癒力とした。ロンドンでペストが大流行した際も、これの呪符が多く貼られた。

文書で残るものには、古高ドイツ語で書かれた『メルゼブルクの呪文』や、古英語の『九つの薬草の呪文』。本といえば、まだ写本が貴重だった時代、盗難除けに奥付にブックカースなる呪いの言葉が書かれていた。破門・地獄行き・アナテマ(強く呪われたもの)となる等!

あの、シェイクスピアの墓には、本人が刻んだという、遺骨を動かそうとするものに対する呪いが書かれている。

創作にも多くの呪文が登場してきた。『シンデレラ』の「ビビデバビデブー」、『アリババ〜』の「開けゴマ」、『天空の城ラピュタ』の「バルス」、『ドラゴンクエスト』の「パルプンテ」...等々。

しかし、やはり最強は『メリー・ポピンズ』の「スーパーカリフラジリステックエクスピアリドーシャス」だろう!

絵は『夏目友人帳』のニャンコ先生

古き代の呪文の釘のきしむ壁篠原鳳作