毎月参加させて貰っている〈伊予本プロジェクト〉の読書会で紹介された、クリストファー・マクドゥーガル著『BORN TO RUN』を読んだ。世界一足が速いと言われるメキシコのチワワ州の〈タラウマラ族〉について書かれている。老若男女、自家製サンダル履き、山岳地帯を強靭な脚力と持久力で走り回る。別名「走る民族」! 彼らの伝承には、チュウイなる悪い妖怪がいて、四つん這いで走り回り、家畜の羊を殺し、人の顔をつばを吐くという。また、死者の魂は生前、肉体が残した足跡や髪の毛を回収する為、人の目に見えない程の速さで奔走する。
日本の妖怪では、山口県阿武郡相島に伝わるヨバシリがいる。昭和の民俗学者・瀬川清子の『旅と伝説』によると、帆をまいて舟を走らせていると、向こうから得体のしれない何かがやって来て、隣を走り惑わせるという。灰を撒き、音を立てれば消えるという。
神では、まず有名なのが韋駄天。元は、〈バラモン教〉のシヴァ神の息子スカンダ。〈仏教〉では伽藍を、〈禅宗〉では厨房・僧房を護る。捷疾鬼(しょうしつき)=夜叉が盗んだ〈仏舎利〉を、追いかけて取り戻した。そのスピードたるや、1280万キロを一瞬で! 他にも、釈尊の為に方々を駆け回って食べ物を集め、これが「ご馳走」の由来になったとも言われる。韋駄天といえば、少し前に大河ドラマでやった、宮藤官九郎脚本の『いだてん』!「日本マラソンの父」と呼ばれ、嘉納治五郎から「いだてん」と呼ばれた。今、丁度、〈大阪マラソン〉の中継を見ているのだが、あの〈グリコ〉のマークのモデルの一人は、金栗四三だ!
他にも、絵に描いた走り大黒。「走り人=疎遠になった人」が戻るよう、この像の右足に針を刺して願掛けをする。かつては、その姿より大黒天と思われたが、最近では監斎使者だと考えられている。〈禅宗〉で僧の食物を守る(韋駄天と共通している!)。修行を怠ける坊主に木槌で釘を打ち付ける! 韓国では冥土の死者と言われる。
『ギリシャ神話』にも伝令の神・ヘルメスがいる。空を飛べるサンダルタラリアを履く。ただ、そんな能力も、主にゼウスの浮気の為に使われた...。
都市伝説にも、すごいスピードで走る老婆とかの話がよくある(やはりこういう場合、老爺ではなく老婆だ)。映画では、最近のゾンビは、結構なスピードで走る! 80年の『ナイトメアシティ』や、85年の『バタリアン』が先駆け。
妖怪ではないが、〈ハシリドコロ〉なる薬草が、夢枕獏の『陰陽師』に登場する。辛気に効くというが、幻覚作用により所構わず走り回らせるというのが語源。アルカロイド系の毒による。洋名はベラドンナ。イタリア語で「美しい女性」の意。瞳孔を開かせる効果もある事から、昔はこの実の汁を目にさし、ウルウルの瞳を作っていた!
さて、前述の〈タラウマラ族〉。絵の最後尾にも描いたのだが、古タイヤと革紐で作った〈ワラーチ〉で走る。語源は、かつてメキシコを訪れた、仙台藩の支倉常長が履いていた〈草鞋〉という説も! これが実は商品化されていて、有力陸上部が練習に使用したり、〈愛媛マラソン〉でも〈ワラーチ〉で走っているランナーも! ランニングシューズ頼りでなく、足本来の力を引き出すという。実は筆者もついつい感化され、アウトドアグッズ店で購入(結構売れているという話)。暫く、近所を走ったりしてみた。これを履いて登山する人もいると聞き、山でも履いてみたが、気持ちよかった〜!
宴は続く走るために生まれし者たちの風来松