falls from the skiesの頭文字をとって、fafrotskies。超常現象研究家アイヴァン・サンダーソンの造語だ。『和漢三才図会』には怪雨(あやしのあめ)として載る。
『旧約聖書』『創世記』。ソドムとゴモラには、火と硫黄の雨が降った。『出エジプト』でも、パンのようなマナが。古代ローマのプリニウスの記録によると、紀元前467年トラキアで、荷馬車一台分相当の巨石が降ったとある。紀元前114年にはミルクと血が。紀元前54年にもルカニアに鉄の雨!
日本でも884年出羽国に、石鏃(矢じり)二十三枚が降り、後に新井白石が人工物と発見した。1793年には、江戸で大量の獣毛が。色は白や赤、15〜14cm程度で、太さは馬の尻尾ほどだったという。
1578年ノルウェーのベルゲンでは、黄色いネズミが! 1861年シンガポール大量のナマズ。1876年のアメリカ・ケンタッキー州に降った赤身肉の断片は鑑定の結果、馬か人の幼児の肺の組織とされた…!1890年イタリアカラブリア州では血の雨。1901年アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスのカエルは降水量…いや降蛙量が8cm! 1940年ソ連では16世紀のコイン! 1956年アラバマ州チラチーには、バス・ナマズ等が。1969年アメリカ・フロリダ州プンタゴルダにはゴルフボール!? 1981年ギリシャナフリオンにもカエル、1982年アメリカ・コロラド州エバンスにはトウモロコシの粒。1989年オーストラリア・クイーンズランド・イプスウィッチではサーディン800匹が!
1994年のアメリカ・ワシントン州オークヴィルのスライム状の物は、持ち帰った人に健康被害をもたらし、ネコ・カラス等の死亡例も! スターゼリーと呼ばれる。
21世紀に入ってからも、ファフロツキーズはとどまることを知らず、早速、2001年インド・ケーララ州に赤い雨(菌類の胞子と思われる)、アメリカ・テキサス州テクスカーナに魚。
2009年には、日本でファフロツキーズ騒動が各地で発生して世間を賑わせた!発端は、6月4日午後4時35分、石川県七尾市中島町市民センターに降ったオタマジャクシ。同月、秋田県能代市、宮城県大崎市、石川県七尾市、長野県須坂市、岩手県紫波市、福井県鯖江市、愛知県知立市、静岡県浜松市、広島県三次市、鹿児島県伊佐市…等、各地で目撃情報が相次いだ!
その後も、2010年オーストラリア・ラジャマヌに大量の魚、2012年スリランカに様々な色の雨、2016年には阪神対ヤクルトの試合中、バレンティンの頭上に空から魚が落ちてきて、試合が中断された。2018年中国山東省青島市にもタコ・ヒトデ・アワビ…等が。
驚くべきことに、毎年5・6月に魚の雨が降るというのが、ホンジュラスのヨロ! これには、伝説があり1856年〜1864年に、同国を訪れたスペイン人神父マヌエル・デ・ヘスス・スビラーナが、飢えた人々を救うために降らせたという。なんと、近年その魚をヘブンフィッシュとして全土に発送し、住民の収益としている!
さて、ファフロツキーズ現象の正体だが、様々な説がある。❶竜巻説。ただ、晴天時の例もある。❷飛行機説。あり得るが、では飛行機のない時代は? ❸いたずら説。 ❹錯覚説。例えば大量のカエルを見て、空から降ってきたと思う。あり得る話だが、実際空から降る様子が撮影されている例がある。その他にも、超常現象研究の先駆者チャールズ・フォートは、テレポーテーションによって運ばれたものが、大気圏上の超サルガッソー海に蓄えられていて、時々降ってくるというトンデモ説を語っている。まぁ、これはさておき、恐らく各事例毎に、様々な原因があるといったところだろう。
小魚や、オタマジャクシについて最も有力なのは、❺サギ等の鳥説だろう。2019年の七尾市の時にもこの説が言われたが、当初〈山階鳥類研究所〉は、「吐き出したものは団子状になるはずだし、飛行中に吐き出す事もあり得ない」とした。しかし、〈北海道アオサギ研究会〉の松長克利氏は「議論の余地なくサギの仲間の仕業に間違いない。アオサギはちょっとしたきっかけで、未消化の餌を吐き出すもので、実際、何十回となく目撃している。」とメディアの取材で語っており、消化程度は飲み込んでからの経過時間に左右される…とも。後に〈山階鳥類研究所〉も、前言を撤回している。さすが、餅は餅屋ならぬ、鷺は鷺屋である! これには、面白いオチがついていて、この件がマンガにされた際、松長克利氏の顔が似ても似つかない、怪しいUFO研究家のように描かれていた!
さて、最後になるが、ファフロツキーズ現象は、創作でも描かれている。映画『マグノリア』、『ハリー・ポッター』。村上春樹の『海辺のカフカ』でも! 描いたのは『ジョジョの奇妙な冒険』で、天候を操る能力者ウェザーリポートが蛙の雨を降らせたシーン。
カエル降る東京スカイツリーにバベルの塔に風来松