約一反(約10.6m✕30cm)の木綿のようなものが、夕方ひらひら飛んできて人を襲う。首に巻きついたり顔を覆い、窒息させるという。また人の体に巻き付き、飛び去るとも。
鹿児島県肝付郡高山町に伝わる。地元では、「遅くまで遊んでいると一反木綿が出るよ!」と子供に言った。権現山から、また、かつて疫病の際、骸を埋めた穴のある荒瀬山から来るとも。いったんもんめ・いったんもんめん、単にお化けや幽霊を意味するマン・メンとも呼ばれた。四十九所神社に出ると言われ、最後尾の子供を襲うとも、子供らと仲良く遊ぶとも言われる。
土地では、土葬に木綿の旗を立てていたので、これが正体という説がある。
現在でも、鹿児島、福岡、東京等で目撃例があり、俳優・佐野史郎も、ドラマ『怪』の収録時に見たと言う。
『ゲゲゲの鬼太郎』の一反木綿も薩摩弁の人気者。境港の〈第一回妖怪人気投票〉では、1位に輝いた!
似た妖怪に、佐渡島の衾(お歯黒が苦手)、愛知県佐久島の布団かぶせがいる。
一反木綿が初めて記録されたのが、民俗学者・野村伝四と、柳田國男の共著『大隅肝属郡方言集』。この野村伝四、地元肝属郡高山町の生まれなのだが、夏目漱石門下で、森田草平も羨む程可愛がられた人物。あの修善寺の大吐血の時も、彼と安倍能成の二人だけが許されて側で看病をした。寺田寅彦とも仲が良かった。春風駘蕩として、朴訥な人柄だったというので、もしかすると漱石に一反木綿の話もしたかもしれない。
桜島一反木綿天高し風来松