352. 天才

さて、フィラデルフィア実験の際、駆逐艦〈エルドリッジ〉に設置されたのが、共振を利用し高周波・高電圧を発生させる〈テスラコイル〉である。

テスラと言えば、今やイーロン・マスクの電気自動車で知られるが、その由来となったのが、オーストラリア帝国の電気技師・発明家ニコラ・テスラ。 1884年渡米し、トマス・アルバ・エジソンの元で働くも対立して1年で退職。(エジソンは直流推し、テスラは交流)独立して交流電動機を開発した。蛍光灯やネオンも彼の発明。

そのテスラがフィラデルフィア実験に初期から参加し推進したという。しかし、第一回実験の惨事の後、身を引いたとされる。その後、〈殺人光線〉や〈人工地震発生機〉等も作ったと言われるが、彼いわく「全て戦争を終わらせる為」だった...。実は異常に鳩に執着したり、JPモルガンの娘との浮いた話があったり、SF界の巨匠ヒューゴー・ガーンズバックと親友だったりと、なかなか人間味溢れる人物だったようだ。

逆にテスラと何かと争うこととなるエジソンは、テスラの交流を電気椅子に使用するネガティブキャンペーンを行ったりと、なんだか姑息。あげく裁判ではテスラに負けている...。降霊会に参加したり、死者と交流できる電話を研究したり、死ぬときに自分の息を採取させたりした事なんかは、評価できるが...。

一方、その後のフィラデルフィア実験を引き継いだ男は、紛れもなく天才ではあったが、問題のある人物だった...。その名はジョン・フォン・ノイマン。20世紀科学史における最高の頭脳と言われる。なんと、IQ300!?(現在の日本人最高が起業家・大前研一の216。ギネス世界記録がアメリカのコラムニスト・マリリン・ホス・サバントの228だ。)幼少より古代ギリシャ語でジョークを飛ばし、ディケンズの小説を完璧に丸暗記した...!

彼もまた、ナチスから逃れブタペストからアメリカへ移住。1930年世界最高の学術機関とも言われる〈プリンストン学術研究所〉へ。そこには、アルバート・アインシュタインや、今、映画で話題のロバート・オッペンハイマーもいて、彼らと〈マンハッタン計画〉に参加する事となる。〈ゲーム理論〉、天気予報、コンピューターもノイマンの発明と言える。スタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情』のモデルともなった。ポリシーは「たとえ、どのように利用されようと、科学の発明は止めるべきではない」。自らの実験で浴びた放射能が原因で57歳の若さで亡くなった...。

実はテスラはその10年以上前フィラデルフィア実験の年に死亡している...。ニューヨークのホテルの一室で無一文、孤独死だったと言われる。が、彼の残した数トンにも及ぶ発明品や設計図は、軍とFBIにより全て没収された...。後にベオグラードの〈ニコラ・テスラ博物館〉に返還され2003年ユネスコ記憶遺産となった。

最後に...実はフィラデルフィア実験当時、フィラデルフィア海軍工廠に信じられない三人が同時にいて、写真も残っている。先に挙げたヒューゴーの次の世代のSF界の巨匠、ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフ、L・スプリング・ディキャンプである! こんな奇跡が起こる場所なら、もしかするとフィラデルフィア実験も真実なのかもしれない...。

日雷天才どもの狂宴に風来松