2023年9月12日。メキシコ議会の未確認異常現象の公聴会において、2体のミイラが公開された。身長約60cm、飛び出た後頭部、大きなつり目、3本の長い指。実はこれらは、2017年、ペルー・ナスカ近郊の珪藻採集所で発見された、既に知られた物だった。ただ、〈メキシコ海軍保健科学研究所〉のホセ・デ・ヘスース・ベニートスは調査の結果、大きな目と脳を持ち、歯は無し、一体の中には卵と思われる大きな塊がある。そして、DNAの3分の1は未知成分だったと発表。放射性炭素年代測定によると約1000年前のものだという。組み立てられた形跡は無し。2体はクララ・マウリシオと名付けられた。
公開したのは、ハイメ・マウサン。ジャーナリスト・ユーチューバー・宇宙人研究家である。彼の超常現象動画のビデオプラットフォーム〈Gaia.com〉は、時価総額77億円の上場企業。しかし、前述の海軍研究所のベニートスと、マウサンは、かつてインディアンの子供や、リスザルを宇宙人としてでっち上げた前科がある…。
会議には、ハーバード大学の天体物理学者エイブラハム・アヴィローブ教授(宇宙人は既に地球上に存在していると主張)、元米軍パイロットライアン・グレイブス(かつてUFOを目撃)、そして日本からも〈日本維新の会〉の浅川義治(UFO議員)…と、見るからに怪しい面々が出席。浅川議員は、後に「石膏などで作られた人工物には見えませんでした。」とも、「石膏の作り物の可能性も捨てきれない。」とも、なんとも玉虫色の発言をしている。ちなみに、彼はこの翌年に超党派の〈安全保障から考える未確認異常現象解明議員連合(通称UFO議連)〉を発足! 石破茂・中谷昇・前原誠司・小泉進次郎ら錚々たるメンバーが名を連ねている。
実は、宇宙人のミイラ・遺体とされるものは、これまでも世界各国で報じられてきた。1999年中国の軍事施設から流出、2002年アメリカ・テキサス州サンアントニオ、2006年グァテマラ・ペテン、アルゼンチン、イタリア…と、枚挙にいとまがない。ただ、悲しいかな、そのどれもが大きな頭部・大きなつり目・やせ形のヒューマノイドタイプで、既視感は否めない。ペテンならペテンで、せめてデザインとか、サイズとか、もう少し工夫して欲しい。だいだい宇宙人という呼称自体、烏滸がましい。この宇宙には、地球以外に生物はいるとは思うが、その姿が我々人類に似ているとはとても思えない。そう思うと、H・G・ウェルズのあのタコ型火星人が、なんだか、懐かしくなってきた…。
2024年1月。〈ペルー検察庁〉の法医学専門家は、3カ月に及ぶ調査の結果、上記のメキシコの2体のミイラは、紙・接着剤・金属・人と動物の骨で作られた物で、地球外生命体や宇宙人ではないと結論づけた…。更に、〈ペルー文化庁〉は、古代アンデス文明の物体をペルーから持ち出した件について、刑事告訴している。
なんだかなあ〜…。古代のミイラをそんな事に使うなんて、死者への冒涜だと怒りが湧いてくる。一方で、国の議会でこんな事が起こっちゃうメキシコという国の、トホホ感は微笑ましくさえある…。
三本指咲いたら枯れる竜舌蘭風来松