294. おんぶオバケ

最近、おんぶされている赤ちゃんを、あまり見かけない。見かけが嫌われたり(前でクロスさせるおんぶ紐も含め)、赤ちゃんが見えないことへの不安、家電・ベビーカーの質の向上…等が理由として挙げられている。一方で、首が座った後は、おんぶがいいという専門家の意見も少なくない。呼吸がしやすい事や、背負っている大人と同じ視線でものが見れて、社会性がつく等と言われている。実はおんぶの習慣がある国は少ない(アフリカにもあるが、日本と違って骨盤の上あたりに乗せる形)。明治に来日した、貝塚発見で知られるエドワード・モースも、おんぶに驚き、『この習慣の為、日本の赤ちゃんは世界一だ』と、べた褒めしている。ちなみに、この「おんぶ」という言葉の語源は、ポルトガル語の「オンブロ=肩」、韓国語の「オブバ=背負う」という説もあるが、普通に考えて「負う」からだと思うのだが…。

さて、いわゆるおんぶオバケは多くいる。まず、新潟三条のおばりよん。夜、藪の中から「おばりよん」と言って負ぶさってくる。体は小さいが、次第に重くなり、離れない。頭を齧るとも言われ、土地の人はこれを恐れて火鉢を被った。残しておいた弁当の残りを食べると離れるとも言われ、この点餓鬼憑きと似る。新潟には、ばろうぎつねバイロン石・中蒲原の島の坂など、同様の妖怪話が特に多い。他の県にも、大阪の負われ坂、広島比婆のおいががり、徳島のオッパショ石…等がある。

最も有名なのは、徳島の子泣き爺だろう。老人の顔をした赤子の姿で、抱いてやると石のように次第に重くなり人を押し潰してしまう。実はこの妖怪、元々この土地に言い伝えはない! ただ、山中で赤子のように泣く妖怪と、赤子のような奇声を発する老人の話はあり、これが一体となり誕生したと思われる。

高知のこぎゃなきも、色白の赤子の姿で泣きながら人の足に纏わりつく。もしくは、一本足で山中を徘徊し、これが泣くと地震がおこるとも言われる。青森には子泣き婆がいる!

昔話では「取っつく引っ付く型」と呼ばれる。「引っ付くなら引っ付け〜」と返すと、本当に引っ付いてくるのだが、最後にはそれが小判や金になるというパターンが多い。また、それを真似たものが、引っ付いたものを取ろうと火を使って、焼け死んでしまうという話も!

茨城に伝わる、ある女から頼まれた子を抱いたところ重くなったが耐え、観音から怪力を与えられたという話が、よく似ている。岐阜の中津川にも、目の光る化け物を背負ったところ、小判になったという話がある。

絵に描いたのは、横山隆一の1972年放送のアニメ『おんぶおばけ』。ヒスイの精オンブーが繰り広げる、昔話や民話を織り交ぜたほのぼのストーリーなのだが、最終回にはオンブーが、洪水から村を守り、ヒスイに戻るという、なんだか『鉄腕アトム』のようなシリアス展開に!

おんぶと言えば、「露とこたえて〜」の『伊勢物語』や、中勘助の『銀の匙』。個人的には、昔付き合っていた女の子が足をひどく怪我した時期があって、古いマンションの暗い階段を、彼女をおぶって上り下りした事。後は高校の部活で、雨の日に先輩をおんぶして校舎の階段を上り下りした事なんかを思い出す…。

盆踊りおんぶおばけの五六匹風来松