54. ゴーレム

もう随分前に、チェコのプラハにビールを飲みに行った。(ピルスナーウルケル♡)その時にユダヤ人墓地でゴーレムに出会った。最早、土塊だったが…。

16世紀、ルドルフ2世の世。プラハは学問と芸術と魔法の町となった。王の寵愛を受けた一人に、ユダヤ教のラビ(司祭)イェフダ・レーブ・ベン・ベツァレルがいた。ユダヤの民の苦難を救いたいと願う彼のもとに、ある夜天使が現れ、ゴーレムを作るように言う。ブルタバ川の粘土と、カバラの魔術で作られたゴーレムは並外れた力で人々の為に活躍した。しかし、ある日スペイン人の将軍に目を付けられた事で、悪用されるのを防ぐためゴーレムは土塊に戻された。ラビ・レーブは1609年旧ユダヤ人墓地に葬られ、その周りの土はゴーレムの成れの果てだと言う。ヤン・クルータ『GOLEMプラハの昔話』より 

ゴーレム。ヘブライ語で「未完成のもの」「形無きもの」「胎児」「蛹」の意。作った者の命のみ忠実に実行する。「emeth(真理)」と書いた羊皮紙を額に貼り付けて完成させる。これを壊す時は、頭文字「e」を消し「meth(死)」とする。その体には「ジェム・ハ=メフォラシュ(その明示的な名)」が刻まれているとも。また、これを作る時は221の門のアルファベットの知識を必要とする…と、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『幻獣辞典』にある。

別の話では、ゴーレムの名はヨーゼフといい、死者のを召喚したり、姿を消す能力を持つ。壊れた後の土塊は、シナゴーグの屋根裏部屋に保管されているとも。恋に落ちて凶暴化するという話もある。また、プロイセンでは見るもの全てに火を付け、どんどん巨大化したという。

チェコの国民的作家カレル・チャペックが『RUR』に登場させたロボットも、ゴーレムに似ている。『ギリシャ神話』のタロースフランケンシュタインの怪物ターミネーター、安彦良和の『ジャイアントゴーグ』等にも、共通のテーマを感じる。

ゴーレムよ永遠に微睡めカレルの下で風来松