最初の竜がティアマトなら、最初の女はリリスである。
最初の女ならイヴだろうと思われがちだが、リリスこそ、神が土くれよりアダムと共に作り出した、最初の人間の女だと言われる。
リリスは、アダムと対等に扱われなかった為、エデンを飛び出した。彼女を連れ戻すためにセノイ、サンセイノ、セマンゲロフの3天使が紅海に遣わされる。天使らはもし戻らなければ、アダムとの間に出来た子供を毎日100人ずつ殺すと告げる。リリスは海に身を投げるが、その際「私は産まれてくるアダムとイヴの子を苦しめる者、ただし3天使の護符を目にした時は危害は加えない」と言った。
別の話では、リリスは神の罰により、下半身を蛇とされ、夥しい数の子リリンを産み、その中の100人を毎日殺される運命を負わされる。やはり、ここでもリリスは海に身を投げるのだが、彼女の死を哀れんだ3天使が彼女を蘇生させ、これから産まれてくる子の運命を決められる力を与える。男なら8日。女は20日。私生児なら一生。ただ、3天使の護符があれば、その支配から逃れられるとした。
これらの話は、中世に書かれた『ベン・シラのアルファベット』による。ベン・シラは、預言者エレミアの、処女の母だとある。
『創世記』にイヴが産まれる記述の前に、神が自分の姿に似せて男と女を創造したとあり、イヴ以前に妻がいたと考えられた。
また、古代メソポタミアの悪霊であるリリートゥが元とも。蠍と狼の要素を持つサキュバスで、性行を行わず男と性関係を持つことができる。また、妻のいる男は殺し、その子を食べるという。さらに辿れば、風の神エンリルから派生したとされる。
その後リリスは、『旧約聖書』では夜の妖怪か動物として。カバラの文献では、悪の君主サマエルの妻として。別のところでは、サタンの妻になったとも言う。
また、悪霊シェディムやリリンを産み、そのリリンの一人ピズナイとアダムの間にも、男女の悪魔が産まれたと『旧約聖書』の注解書『ミドラシュ』にある。一説にはリリンは人間の始祖とも。リリスを避けるための子守唄が「Lilith-abei=リリスよ去れ」→「lullabyララバイ」になったとも。
また、新生児の割礼時に3天使の名を書いて置いたり、リリスを欺くために男子の髪を切るのを待つといった風習が残る。
その存在や名前は、『イザヤ書』、『死海文書』、『ギルガメッシュ叙事詩』などにも見られ、後に『ファウスト』や、ロセッティの詩、アニメ『ヱヴァンゲリヲン』にも登場した。
リリスが去った後、アダムのあばら骨より作られたイヴは従順だったと言う。
一方、リリスは女性解放運動のシンボルとされたり、今も女の中に生き続けている…。
余談だが、同僚のアメリカ人の女性が飼っている蛇の名前は「リリス」と言う。
桜蕊とまりリリスといふ女風来松