247. メキシコ

コロナ発生の前年、メキシコを訪れた。プロレス〈ルチャ・リブレ〉! テキーラ、タコス、マリアッチ、フリーダ・カーロに、ルイス・バラガン、映画『リメンバー・ミー』の舞台のひとつにもなったグァナファト、ピラミッドで有名なテオティワカン...。ワイルドで危険がいっぱいだったが、なんだかとても生きるパワーに溢れた国だった!

前述のティオティワカンは、「神々が住む場所」という意味の都市で、紀元前2世紀頃に建造されたが、8世紀頃、謎の滅亡をむかえている。主神は文化と農耕の象徴、羽毛をもつ蛇ケツァルコアトル(恐竜の名前でも知られる)。火・知識・芸術・純粋な魂を人間に伝えたという。兄弟神である夜・戦・魔術を司るテスカトリポカ(こちらも最近、小説の題名になっていた)により、彼の地を去る事となるのだが、その際「いつか東方より帰還してこの地を治める」と語った。皮肉な事に、これよりずっと後1519年、スペイン人のコンキスタドール・コルテスが来た際、当時のアステカ帝国の王モンテスマ2世は、彼をケツァルコアトルだと思い城に入れてしまい、国は滅ぼされてしまう事となる...。

メキシコにはさらに古い、紀元前12世紀頃に、〈オルメカ文明〉が存在。巨大な人頭像を残した。その後にトウモロコシ神の〈マヤ文明〉。そして、14〜16世紀頃に前述の〈アステカ文明〉。アステカでは、これまでに世界は5回創造され、火の雨や、洪水で滅んできたとされる。現世も地震により滅び、人間は空の怪物ツィツィミメに食べられてしまうという...。

メキシコ関係は、これまでにも幾つか書いてきた。骸骨カラベリタUMAチュパカブラ、グァナファトのミイラ博物館、ソチミルコの人形島オーパーツクリスタルスカル恐竜土偶...。UFOの目撃例も多く、2012年にはポポカテペトルにUFO墜落のニュースが流れた。そんなあれこれが、起こりそうな国なのである。

そしてまだまだ妖怪はわんさかいる! かつて、水木サンも75歳の時に2週間メキシコを旅して、仮面を100個買ったり、死者の日に踊ったり、ピラミッドの上で寝たりしている(詳しくは『水木しげるの大冒険 幸福になるメキシコ』を)。妖怪を幾つか挙げてみよう。ナグアルは南米で広く知られる人に取り憑く動物霊。様々な動物の姿をとり、災いをもたらす。近年、これらしきものが出現しUMAともされる。ヴェラチフは、丸い頭にオウムの嘴の大蛇。毒を持つが、肉が美味で人に狩られもする。メキシコには蛇タイプの妖怪が多い。また、鳥タイプも多く、イクスプクステキは、顎のない頭と鷲の足。旅人の心臓を食べる。トラキークは七面鳥に化けて人の血を吸う。フニクは10000人の血肉を食い不死となった、血に塗れた翼の人面鳥ラ・レチェーサは不潔な子供や、酔っ払った男を攫って食う人面梟の魔女だ。魔女も少なくなく、ウギンは畑で男を誘惑して化かす。エヘキャメも森に棲み人を化かす綺麗な服を着た妖精。好物のタバコを与えると見逃してくれるという。他にも、病死した者の魂を食うコルタ・モルタハ、催眠術で人を連れ去り裸にして暴行するチャネケ、ぬるぬるの肩で人を喰うテキトゥク...等、恐ろしいものが沢山いる...。ヨナルデパズトーリは、水木サンの『悪魔くん』に、悪魔十二使徒の1人として登場する。夜更けに斧で木を切る音を立てる疫病神だが、テスカトリポカの変身した姿とも。グァナファトの、子を殺された女の幽霊泣き女ラヨローナも有名。

しかし、なんと言っても、メキシコといえば死者の日。1/11・12に国中で行われる、言わばお盆。元々は、死者を悼み、煉獄に落ちた者を救済するといった意味合いだった。しかし、現在では派手で明るいお祭りムード。街中にマリーゴールドと、切紙の飾り〈パペルピカド〉と、音楽と、〈カラベリタ〉(髑髏)が溢れる。起源は古く、2500〜3000年前から、骸骨を身近に飾っていたという。アステカの冥府の女神ミクトランシクルトに捧げる祝祭があり、この女神が今ではドレス姿の骸骨の貴婦人カトリーナと同一視される。

風貌がよく似たものに(骸骨なのでそりゃそうなのだが)、死の聖母サンタ・ムエルテがいる。長いローブを身に纏い、手に鎌と地球を持つ。あらゆる願い(善悪の区別なく)を叶えるという。20世紀までは家庭内で密かに儀式が行われていたが、2001年メキシコシティに礼拝所が設けられ、一般化。麻薬犯罪組織との関係が疑われたり、カトリック教会からも悪魔崇拝と非難されているが、20年程で信者が急拡大。今やメキシコ国内だけで300万人、全世界で一億人を超えているとされる...。

絵に描いたのは、『リメンバー・ミー』にも登場したアレブリヘ。様々な幻想的な動物の特徴を持つ死者の守護神。実はこれ、かなり新しい存在で、1930年代、ペドロ・レナリスが病気で寝ている際に見た、不思議な動物達がモデル。アレブリヘというのも、その動物達が叫んでいた言葉だという。レナリスにより紙で制作された作品は、フリーダ・カーロやディエゴ・リベラにも注目され、メキシコ全土に広まった。絵は、筆者が購入したそれで、ネズミかキツネぽい。ほぼ原寸大。アレブリヘは、一家に一匹決まったのがいるらしい。

死者の日やひとりにひとつアレブリヘ風来松