71. 漫画

タイトルに「漫録」をいれているのは、正岡子規の『仰臥漫録』から頂いたのだが、「漫画」の意味合いも兼ねている。元々「漫画」は、「気の向くまま漫然と描いた画」という意味だし、さらに語源はヘラサギを表す「漫画(まんかく)」からという説も。こっちも、「飽くことなく種々の事物を漁る」の意で、まさにぴったりだと思う。

さて、筆者は漫画読みである。現時点でも、15タイトル程追っており、借りて読んでいるものも合わせると30くらいにはなる。雑食で、面白ければジャンルは問わずだ。

今頁では、妖怪漫画についてザッと書いてみる。まず元祖だが、『のらくろ』の田河水泡門下、杉浦茂の描いた『少年児雷也』(1956)。妖怪というより忍者なのだが、怪しい面々が次々と登場する。この作者、一切下書きをしないらしい! 宮崎駿、筒井康隆、横尾忠則、細野晴臣...等、各界にファンが多い。

そして、我らが水木しげる御大の『墓場鬼太郎』(1960)! 翌年『カッパの三平』も発表。絵に描いた『どろろ』(1967)は、「水木しげるが描く一連の妖怪もののヒットと、それに続く妖怪ブームにあやかり作り上げたキワモノ」と、手塚治虫本人が語っている。更に藤子不二雄も『オバケのQ太郎』(1964)、『怪物くん』(1965)と、連載を始めるのだが、この辺りは筆者が生まれる前の事なので、大人になってから漫画を読んだり、アニメ化したのをテレビで見た。当時は、おどろおどろしい『鬼太郎』よりも、『怪物くん』の方が好きだった。何につけても、ダサい日本よりも、アメリカに憧れるという風潮が世間にはあった時代だ。オバQよりドロンパだ。

また、筆者の一世代前頃の作品となると、諸星大二郎『妖怪ハンター』(1974)や、萩尾望都『ポーの一族』(1972)。楳図かずお『漂流教室』(1972)は、後に続編とも言える『14歳』が発表された。

そして、いよいよ少年誌全盛時代。まず『少年サンデー』にて、高橋留美子が『人魚の森』(1984)を描き始める。その後『犬夜叉』。同誌では、藤田和日郎『うしおととら』(1990)後に『双亡亭壊すべし』、椎名高志『ゴーストスイーパー三神』(1991)...と続く。少し遅れて『週刊少年ジャンプ』でも、真倉翔/岡野剛『地獄先生ぬ~べ~』(1993)、藤崎竜『封神演義』(1996)、2000年に入ってからも、大場つぐみ/小畑健『デスノート』(2003)、星野桂『D.Gray-man』(2004)、同系列雑誌で加藤和恵『青の祓魔師』(2009)…。

並行して青年誌でも、三浦建太郎『ベルセルク』(1989)、岩明均『寄生獣』(1990)が大ヒット! 後『七夕の国』。奥瀬サキ『こっくりさんが通る』(1995)、木内一雅/八坂考訓『青龍』(1995)、冬目景『羊のうた』(1996)、漆原友紀『蟲師』(1999)。五十嵐大介『魔女』(2003)、『海獣の子』(2006)、石川雅之『純潔のマリア』(2008)...。

少女漫画でも、萩岩睦美『銀曜日のおとぎばなし』(1983)、日渡早紀『ぼくの地球を守って』(1986)、岡野玲子/夢枕獏『陰陽師』(1993)、緑川ゆき『夏目友人帳』(2003)...。

近年でも、諫山創『進撃の巨人』(2009)、岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』(2013)、アニメだが無視できないヒットとなった小西紀行『妖怪ウォッチ』(2014)、吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(2016)、西修『魔入りました入間くん』(2017)、芥見下々『呪術廻戦』(2016)...と、絶え間なく話題作が出続けている。

「浜の真砂は尽きるとも世に妖かしの種は尽きまじ」

山女一匹向こうの妖(やつ)にも放ってやれよ風来松