50. 麦畑の妖怪

父方の祖母から聞いた話。

彼女が女学生の頃だというので、昭和初期か。場所は愛媛県松山市の麦畑。友人と登校中、それは祖母の前に突然現れた。「手も足ものうて、白っぽい長い尻尾のようなもんが、空を飛んで畑の向こうへに姿を消したんよ。」あまりの事に友人は、腰を抜かしたと言う。普段、冗談こそ言えど、ひとをかつぐことなど無い祖母の話は、彼女の見た事実には違いないと思う...。

また、彼女の夫である祖父からも、別の妖怪話を聞いたことがある。祖父と祖母と従兄弟の三人が風呂へと続く濡縁にいた際、火の玉が飛んできたと言うのだ。祖父が棒で叩いて追い払ったらしい。祖父も豪快な山男だったが、嘘などつくことはない人物だった...。

彼らが見た物が何だったのかは、分からない。ただ、明らかに令和の現代より、妖怪に出合い易い時代だったのだろう。羨ましい限りだ...。

女学生の祖母と麦畑の妖と風来松