271. 耳

村上春樹への質問集『そうだ、村上さんに聞いてみよう』の中で、耳に関する質問があり、本人は耳フェチではないと否定している。本当かなぁ...? 耳といえば、ゴッホや、映画『ブルーベルベット』の冒頭でちぎれた片耳を拾うシーンを思い出す。あとは、ダンボ・チェブラーシカ・『怪物くん』・『プリンプリン物語』の火星人・『スター・トレック』のミスター・スポック・(前に書いた)エルフの耳...。

妖怪では、沖縄のマジムンに、片耳豚や、耳無し豚がいる。ミミガー美味しいもんね...。他には、耳女というのが、仲岡俊哉の『日本妖怪図鑑』に載る。子供くらいの大きさの耳に、目・鼻・口がついた姿。おそらく、作者の創作だろう。和歌山と福岡では、同じ歳の者が死ぬ時に、耳の横がじんじんすると言う。また、山梨韮崎市では、耳のある大鰻を捕まえて食べた人達の村が、火事で全焼したと伝わる。

怪談『耳無し芳一』も有名だ。小泉八雲の『怪談』にも載る。平家の亡霊に、経を書き忘れた耳だけ取られてしまう琵琶法師の話。作り話だろうが、一度訪れた下関の〈赤間神宮〉の〈芳一堂〉は、あまり気色の良いものではなかった。ほかにも、『聞き耳頭巾』も、絵本で読んだ気がする。これ、広島では鯛を助けたお礼に、龍宮乙姫から頭巾を貰う話になっている!

海外では『王様の耳はロバの耳』。元は、『ギリシャ神話』のミダース王の話である。アポロンパーンの歌合戦で、アポロンを支持しなかった為に、ロバの耳にされてしまう(かつてあった〈劇団四季〉のミュージカルは、寺山修司が書き下ろしている!)。前に書いたデュオニュソスから、全てを黄金に変える力を貰ったのも、この人。踏んだり蹴ったりの王様だ...。

中国の仙人達のそれは、長くて大きな〈福耳〉。大黒天布袋恵比寿...ブッダや孔子もそうだったという。日本の有名人では、浅田真央・松井秀喜・水野晴郎...おぉ...どれも何だかありがたいお顔だ!

耳の も、全国にいくつかあり、広島の因島にある〈耳明(みみご)神社〉では、サザエの殻に酒と水を入れて供える。京都や三重の薬師如来では、穴の開いた石に願掛けをする。『古事記』には布帝耳(フテミミ)神がいるが、これは布のほうで、耳とは直接関係はなさそう。栃木佐野の〈耳うどん〉は、その名の通り、耳の形をしているのだが、江戸から大正にかけて作られ、悪神に家の声が聞こえないように、悪口が入ってこないようにとの魔除けの意味を持つ。耳に当て「いい耳きけ」と願かけする。

さて、絵に描いたのは〈耳かき〉。何を隠そう、筆者は耳かきフェチだ。この〈耳かき〉、白人や黒人は粘性の耳垢の為、東アジアにしかないらしい。日本に生まれて良かったー! 迷走神経の集中する外耳に触れる事で、快感に感じるらしい。そして、2割の人は耳かきをすると咳がでる(筆者も!)。ほとんどの〈耳かき〉には、梵天かコケシが付く。これは、江戸時代に贅沢が禁じられた折、簪の端をヘラ状にした物が作られた名残という。「簪でなく、耳かきですが?」というわけだ。

絵の耳の方は、ある有名な大女優の耳を描かせてもらった。ヒントは、A・H。

耳かきの国に生まれて春ひなた風来松