広島・江田島に、引島という無人島がある。周囲500m程度の細長い島である。この島の近くにあるのが、平清盛が一夜で開削したという音戸の瀬戸。実はこの時、塩の流れが変わってしまい、土地の人々は困ったという。それを耳にした鬼が、瀬戸を再び塞ごうと島を引いてこようとしたが、途中で力尽きてしまった。それが、現在の引島だと伝わる。また、鬼でなく弁慶が引いてきたといういう話もあり、彼が島を掴んだのが、島の5つの尾根だと言われている。
平清盛の日招き伝説についても少し触れたい。清盛は、求愛した〈厳島神社〉の巫女に、「もし、一日で瀬戸を開けたならば思いに応える」と言われ、沈みかけた日も、金の扇で戻して見事成就した。巫女はよほど嫌だったのか、大蛇に姿を変えて海に逃げ出したが、清盛は睨みで潮の流れを変えて捕らえたという。ただこれは、室町時代に作られた話とも言われる。『平家物語』には、人柱の代わりに、経を一石に一字書いて海に沈めたという話や、作業中誤って海に落とした刀を拾って、命を落とした海女の碑を立てたなど、良い話が。
さて、清盛はさておき、この地で育った児童文学作家・山下明生(『バーバパパ』の翻訳で有名)が描いたのが、『島引き鬼』。ひとりぼっちで寂しがり屋の鬼が、「人と暮らすなら、島を引いてくればいい」と教えられ、言われた通りに人の住む村へ島を引いてくる。しかし、聴いた話とは違い、行く先々で人間に忌み嫌われ、騙され、厄介払いされてしまう。それでも鬼は、一緒に住んでくれるものを探して、島を引き南の海へ渡っていくのだった...。なんて、切ない話だ〜!
これ、実は小学校の道徳の教科書にも載っているらしく、2つの短歌の作者・山添姉弟も、おそらくそれで知ったのではないだろうか。この中1と小6(2024年当時)の姉弟は、今話題の歌人。『朝日俳壇』では、何年も前から母の山添聖子共々常連で、先日はNHKの『沼にハマってきいてみた』にも出演。初家族歌集も出版している。
さて、『島引き鬼』には続編があり、なんと南の島へ向かった鬼は奄美にたどり着き、ケンムンと仲良しになるらしい!
まだうみをあるいてるのかもしれないしまひきおにとともだちになる山添聡介
弟がひきおにを呼ぶらしいコアラのマーチを半分こして山添葵