白い長毛を持つ、1.5〜3m位の美しい虎のような姿。朝鮮半島の萇山、仁川、大邱、北朝鮮と韓国の軍事境界線等で目撃されている。月明かりが暗く、空気の重い、静かで、冷たい風の吹く日に現れるという。一度聞いた声を真似ることができ、それを使って子どもを誘い出し喰う。苦手は、騒音・赤色・髪の焦げる匂い。2013年韓国のジャク・スヨンのマンガで有名になった。
朝鮮では、長い年月を生きた虎は全身の毛が白くなり、歯が抜け角が生えるという言い伝えがある。元よりこの地域で虎は、民族を象徴する霊獣として畏れられてきた。昔話も、「むかしむかし、虎が煙草を吸っていた頃…」で始まる。朝鮮文明の起源とされる『檀君神話』にも登場。かつては〈虎を操る君主の国〉とよばれた。紀元前37年高句麗の古墳に描かれ、後漢の『風俗通義』にも「虎が鬼を食べる」と書かれている。18世紀頃の『山神図』にも多くの虎が描かれている。1894年訪朝したイギリスのイザベラ・バードも「半年は虎が人を狩り、半年は人が虎を狩る」と記している。加藤清正の虎退治も有名。だが、今現在、朝鮮半島に虎はいない…。
朝鮮半島の虎は、〈アムール虎〉だった。1900年代前半には、全土に生息していたが、国による駆除が行われ、日本統治下で更に拍車がかかり、1950年には絶滅したとされる。ただ、それ以降も目撃が相次ぎ、足跡が発見されたり、家畜や人が襲われたりもした…。1996年には、北朝鮮が公式に、十数頭が生息していると発表! 2000年代にはいっても、特に多くの野生動物がいるとされる〈軍事境界線〉付近で、軍人に目撃されている。
民族は分断されたが、その結果、この地の神とも象徴ともされる虎が生き残っている可能性があるというのは、皮肉な話だ。いや、妖怪やらUMAというのは、そういう境にこそ存在するという事か…。
萇山眠る高句麗人喰らふ虎蔵し風来松