59. ツチノコ

筆者が子供時代のUMA(そんな言葉もまだ無かったが)3大スターと言えば、ネッシー雪男、そしてツチノコだった! 前2つは明らかに遠い外国の世界的なスターだったのに比べ、ツチノコは今でいう御当地アイドル的存在で、下手すると自分達でも捕まえられるのでは…という、淡い夢さえ抱かせてくれる未確認生物だった…!

ツチノコバチヘビヨコバチノヅチツツマムシツチンボ…全国で40種近くの呼び名がある! それが表すように、北海道と南西諸島を除く日本全土で、伝承や目撃が存在する。妖怪とされる野槌タテクリガエシも、同じとする説もある。

体長は30〜70cm、三角形の頭、ビール瓶のような太く平たい胴体、短い尾。瞼がある。色は黒、灰、焦げ茶…背中には縞や斑模様。尺取のように前後に進む、丸まって転げる、尾を咥え輪になって転げるとも! 素早く、2メートル以上ジャンプする。鼾をかく。チーと鳴く。唾液は猛毒。好物は、味噌、スルメ、日本酒!

歴史は古く、岐阜県・長野県で出土した縄文土器にツチノコのようなものが描かれている。『古事記』『日本書紀』にも野槌神(カヤノカミ)とあり、江戸の『和漢三才図会』には野槌蛇の名で載る。1834年の『信濃奇勝録』で初めてその姿が描かれた。

近年では、1960年、放浪の釣師・山本素石が京都府夜鳴峠でツチノコに襲われた体験談を、釣り雑誌に掲載し、一大ブームとなる! 彼はその後〈ノータリンクラブ〉を創設しツチノコの研究・調査を始める。1972年に田辺聖子が山本をモデルにした小説を発表。翌年ドラマ化もされる。その年、『釣りキチ三平』を連載直前の矢口高雄が、『週刊少年マガジン』に『幻の怪蛇バチヘビ』を描き、再びブーム到来! その2年後、『ドラえもん』でも登場する。

その間、福岡県、兵庫県等で、捕獲騒ぎ、目撃情報が起こり、80年代から00年代にかけも、全国各地で目撃が相次いだ。現代でも、岐阜県で〈ツチノコフェスタ〉、新潟県糸魚川や兵庫県但馬市で、1億・2億の懸賞金をかけたイベントが開催されている。

描いたのは1989年『ちびまる子ちゃん』の、『まぼろしのツチノコ株式会社』より。まる子たちは、あと一歩のところで捕獲に失敗したのであった…。

奥山に今日も一人ツチノコを食う風来松心の俳句