昔から、お化け屋敷が好きだった。近所の神社通称〈椿さん〉の祭では、毎年立つお化け屋敷が一番の楽しみだった。遊園地でも、あれば必ず入ったし、〈ディズニーランド〉では〈ホーンテッドマンション〉が一番のお気に入り。(一回しか行ったことはないが)ただ、本物の幽霊屋敷の方は、どちらかというと苦手だ…。
メッカはやはりイギリス。最も有名なのがボーリー牧師館。130年間で1000回以上幽霊が出たと言われる。発端は1862年、ヘンリーブル司祭が17人の家族と共に赴任し、牧師館を新築した事に始まる。直後、18の鐘が一斉に鳴り出すという怪異が起こる。その後も、白衣の修道女の幽霊(かつて駆け落ちの末、惨殺された)、2本の足だけの幽霊、月夜の晩には四輪馬車の幽霊等が何度も出没。1920年代に悪魔祓いが行われ、一時的に落ち着いた。が、1939年火災がおこり、その何年か後に地下から女性の頭蓋骨が発見される。そして、現在に至るまで再びポルターガイスト現象等が起こり続けている…。
他にもイギリスには、何人ものショック死や、狂死者を出しているバークリースクエア50番地、200年生きた毛むくじゃらの巨大な怪物が監禁されていたグレイミス城、ヨークシャーアグネスホール…等、いくつもの幽霊屋敷が存在する。
アメリカも負けてはいない。まず、ウィンチェスターミステリーハウス。あのウィンチェスター銃を発明した、ウィリアム・ワート・ウィンチェスターの未亡人サラの、カリフォルニア州サンノゼの邸宅。彼女は、霊媒師にウィンチェスター銃の被害者の霊から逃れるために、部屋を増築するように言われ、38年間ひたすら増築を続けた…。最終的に40の寝室、2つのダンスホールを含む部屋数は、160にまでになった…!
他にも、殺害された奴隷達の幽霊の出る、マダム・ラロリー邸は、2007年、ニコラス・ケイジが345万ドルで購入し、一時所有していた!
そして、ホワイトハウス! リンカーン大統領の幽霊が有名で、多くの目撃証言がある。その中には、ロナルド・レーガンの娘や、オランダ女王、そしてあの英国首相チャーチルも。さすが豪胆なもので、挨拶して話しかけたという! リンカーンの葬儀に使われた列車の幽霊も出るらしい。
そう来ると、日本の首相官邸の幽霊も気になる。最近でも、本人や奥方が怖がるからと、官邸を利用しないという首相がいた。やはり、226事件絡みの幽霊だろう…。
もちろん、日本各地に幽霊屋敷は数え切れないほどある。北海道東神楽町悪魔の家、埼玉県杉戸町関口邸、茨城県土浦市権堂の家、神奈川県横浜市白い家、愛知県あま市三角の家、大阪府箕面市犬飼邸…。詳細は割愛する…怖いので…。
そういえば、我が愛媛県にも伊予市上灘に犬寄山荘というのがあり、大学時代に肝試しに行ったっけ…。小学校の頃野外活動で行った面河少年自然の家も、幽霊が出ると専らの噂だった。終いには、小学校の利用が中止され、やがて閉鎖されてしまった…。
歴史上、日本で最強の幽霊屋敷は、やはり『稲生物怪録』の舞台、広島県三次市の稲生平太郎邸だろう!
創作では、1967年の映画『家』が先駆けか。意外にも日本では『ロッキー』の同時上映だった! そして、ロングアイランドでの実話を元にした1979年の『悪魔の棲む家』。1982年の『ポルターガイスト』は、出演者の怪死が相次いだ…。2015年サム・ライミがリメイクするも、何故か日本未公開。ILMがSFXを手掛けたので、『スター・ウォーズ』グッズが多く登場する!
荒木飛呂彦のマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ『デッドマンズクエスチョン』では、屋敷自体が幽霊という、屋敷幽霊が登場した!
お化け屋敷に戻ると、元祖はやはりイギリス・ロンドンで、1835年に完成した〈マダム・タッソー館〉と言われる。この中にあった〈恐怖の館〉は、フランス革命のマリー・アントワネットの生首から、アドルフ・ヒトラー、殺人鬼チャールズ・マンソンまで、悪趣味な蝋人形が陳列されていた。(素顔が不明な為、切り裂きジャックは無かった)が、現在は閉鎖されてしまっている…。日本では、江戸時代、江戸大森の医師・瓢仙が自宅に作った〈大森の化け物茶屋〉。人気を呼ぶも、けしからんということで、これまた3ヶ月で閉鎖…。遊園地のものとしては、昭和30年代〈宝塚ファミリーランド〉が初。
現代でも、お化け屋敷プロデューサーまで現れて、ますます盛んだ。第一人者・五味弘文の、裸足で入場する足狩族なんて出色だと思う。2024年の夏には、お化けのいないお化け屋敷も出現!五感で恐怖を味わえるらしい…。
描いたのは、1927年から東京深川に渡辺金蔵が建築を続けた〈二笑亭〉。地元ではお化け屋敷と呼ばれた。10年以上に渡り、設計図もなしに、奇妙な増築を続け、家族も逃げ出してしまった。〈二笑亭〉をモデルに藤田和日郎はマンガ『双亡亭壊すべし』を描いた。ほぼ唯一の資料として残るのが、建築家・谷口吉郎の書いた『二笑亭奇譚』。ただ、ここに描かれている金蔵と近所の子供との交流の様子などを見ると、好きな事を続けただけの優しい人物という感じもする。そんな思いも込めて句も詠んでみた。
寒卵二笑亭へとお裾分け風来松