140. ポルターガイスト

原因不明の、物体の移動、ラップ音、発光、発火...等が繰り返し起こる現象。ドイツ語で「騒がしい霊」の意味。

明治大学のメタ超心理学研究所の石川幹人教授が、元ジョージア大学のポルターガイスト研究の第一人者ロルの主張として、ポルターガイスト現象には、ある特定の人物の周りで起こるものと、特定の場所で起こるホーンティングに分けられると説明している。この関係は、幽霊妖怪に似ている。前者は、その人物が眠っていたり、外出している時には起こらず、未成年の女子の場合が多い。彼女達の心の不安定さが関係していると言われる。後者は、低周波空気振動による〈定在波〉や、電磁波、磁気等が原因とも考えられている。

古い記録では、1661年イギリス・テッドワースの判事の家で、放浪者から取り上げた太鼓が鳴り、子供が宙を舞い、排泄物が巻き散らかされたという。

1741年には江戸の評定所に務める男の家で、天上から轟音が響いたり、灯籠が舞い上がったり、茶碗や皿が飛んだ。ある老人の助言に従い、池尻村から下働きに着ていた娘を里に返すと、治まったと『古今雑談思出草紙』にある。1799年にも同様の事象が起こり、この時も下女を池袋に返すと止んだと『耳嚢』に載る。池尻村の方は、氏子を惜しむ産土神の仕業とされ、池袋村の方は他にもいくつかの例があり、ある事件では娘がオサキ遣いの家の出だったとある。

海外で最も有名なのは、1848年のフォックス姉妹の事件だろう。彼女達はポルターガイストを起こしていると交信し、そのの人骨が後に発見された! ただ、インチキだったと暴露したり、また暴露を否定したりと迷走した...。この事件でラップ音と言われる言葉も誕生した! 20世紀に入ってからも、1961年ドイツ・ローゼンハイム。1977年イギリス・エンフィールドでは2年以上続き、その間膨大な記録も残された。(後に『死霊館』として映画化)1981年のイギリス・バーミンガムでは、出どころの判明しない投石。1984年イングランド・チェスターでは、15名のがコンピューターを使って通信と、ポルターガイストといっていいのか判断できない変わり種も。

日本において、最大のポルターガイスト事件が起こったのは、まさに世紀末の1999年。場所は、岐阜県富加町。新しくできたばかりの町営新築団地〈高畑住宅〉。ラップ音、テレビのチャンネルが勝手に変わる、食器が飛び出す、水道からひねってもないのに水が出る、コンセントを入れていないドライヤーが作動する...等の現象が相次ぎ、自治体に相談するも埒が明かず、住民は〈木曽御岳真教〉に除霊を依頼。かつての自殺者のだと指摘される。一方、〈国際総合研究機構〉の物理調査も行われ、何らかの理由で電子回路の増幅率が突発的に増大していると結論した。この時には騒ぎは大きくなっており、マスコミ、詐欺師、織田無道らの霊能力者等が大挙して、大混乱に陥っていた...。女の幽霊を見たとか、3歳の息子がおじいちゃんのと話している...等の話も...。ただ、除霊と調査の後、ポルターガイストはピタリと止んだ...。約四半世紀前のこの騒ぎを、今の住民は全く知らないとも言うし、近隣住民の中にはある一部の住民による騒ぎが拡大して迷惑だったとも。

この手の騒ぎや事件でよくある事だが、発端となった事象の後で、イタズラ・トリック、集団ヒステリー等が起こり、結局そういう事だったのね...で収束してしまう...。前述のフォックス姉妹の件もそうだし、コティングリー妖精事件も、写真の1枚は本物だったという。特にこのポルターガイストについては、怪しい件を除外しても、不可解な現象が実際に古くから世界中で発生していると思われる。そこには、例えば未知のエネルギーとか、能力とかがあるかもしれない。そういう物をイロモノとしてだけ片付けてしまうのは、非常にもったいないと思う。きっと、寺田寅彦やライアル・ワトソンも同感だろう。

そんな事を思いつつ、絵を描いてみた。モデルは1982年のトビー・フーパー監督『ポルターガイスト』。現象に襲われた一家を訪れて、楽しそうに調査をしている科学者達の姿は印象的だった!

悪霊を論破し人の解夏となる風来松