十二支の最後となったのは羊。
古代メソポタミアで、7000年ほど前に家畜化。脂肪や毛の為で、肉や乳、皮の方は更に1000年ほど先行する山羊の方が優れていたらしい。2000年程前に栄えたバビロニアは羊毛で栄え、その名前の由来も「ウールの国」だという説がある。
日本では鳥取県の青谷上遺跡から、頭部に羊が描かれた琴のような物が発掘されている。文書としての初出は『日本書紀』で、推古天皇に百済から献上されたとある。本格的に羊の畜産が始まったのは、1875年、大久保利通が下総に軍用毛布の為に作った牧羊場。翌年、あのクラークが札幌農学校(現在の北海道大学)の教頭として赴任した。マサチューセッツ農科大で出会った、日本人として初の留学生である新島襄の紹介による。
さて、羊と言えば、キリスト教の「迷える子羊」。イエスも自身を「善き羊飼い」と言い、『ヨハネ黙示録』では、キリストは7つの目と角を持つ子羊として描かれている。『旧約聖書』や、イスラム教では、神への生贄とされる。
『ギリシア神話』には、黄金の羊が登場する。元はゼウスがプリクソスとヘレーに遣わしたのだが、後に黄金の毛皮はコルキス王により所有され、眠らないドラゴンに守られた。それを奪ったのが、イオールコス王イアーソンと、〈アルゴ号〉の50人の勇者達だった。
『エジプト神話』には、創造神であり、ナイルを司る〈ワニの王〉、羊頭人身のアメン神がいる。
また、中世ヨーロッパでは、黒海以東のアジアにあるという、子羊のような形で、カニの味のするバロメッツなる果実が信じられ、南方熊楠の『十二支考』にも載る。
『中国神話』では、羊は五穀をもたらし神とされる。獬豸(かいち)は、瑞獣である神羊。その一角で悪人を一刺しにする。(中国の法律に携わる役人の帽子にも描かれている。)饕餮(とうてつ)は、邪神・四凶の一。体は牛か羊、顔は人。曲がった角に、虎の牙を持つ。何でも食べる。ドロウは崑崙に棲む四本角の凶悪な羊で、人を食うと『山海經』にある。
UMAでは、アメリカ・カリフォルニア州サンタポーラの羊男。2mの筋肉質な、羊頭人身。全身、カールした毛に覆われている。かつてこの地にあった酪農工場で、軍により極秘に生み出されたものだという…。
さて、絵に描いた羊男は、前述のUMAとは違い、大人しく戦争を嫌う。北海道の山奥や、真っ暗な何処かの空間、図書館の地下等にいる。一人(匹)でなく、複数存在する。「6月15日に月を見上げたり、12月24日にドーナツのような穴の開いたものを食べてしまうと、ピアノが弾けなくなる」という呪いをかけられている。村上春樹の『羊をめぐる冒険』や、『ダンス・ダンス・ダンス』等に登場する。
二十二夜羊をめぐり踊踊踊風来松