43. ゾンビ

何らかの理由で蘇った死体。

起源は西アフリカ。ブードゥー教の司祭の一つ〈ボコ〉が、死者から抜け出したばかりの魂〈ロア〉を捕獲し、死体を思いのまま使役する呪術。この土地から奴隷としてアメリカ大陸に連れ去られ人々により、ハイチ等のカリブ海で継続された。人々は、ゾンビにさせないよう36時間見張る、死者に毒薬を施す、死体を切り裂いたりするという。語源はコンゴ語族で「神」を意味する「ンザンビ」。

ゾンビにさせるゾンビパウダーは、ナイジェリアのカラバル人発祥。西アフリカでは刑に処する際、この毒を用いる。1980年、植物学者ウェイド・デイビスは、ゾンビの正体が、ハリセンボンやチョウセンアサガオの毒で意識を混濁させられた囚人だとの学説を発表。確かにゾンビパウダーにもテトロドキシンが含まれているのだが、ハリセンボンにはこれはない。

中国のキョンシーゾンビの一種といえる。こちらはアフリカとは違い、一切腐敗しない。血に飢えた凶暴な人食いという点は同じ。月日が経つと神通力を備え空も飛ぶ! 道士が出稼ぎ人の遺体を故郷へ運ぶ手段としたのが始りという。ミイラのようなコンシーもいる。

創作では、1929年ゾンビについて書かれたウィリアム・シーブリック著のフィクション『魔法の島』を元にした、1932年の映画『恐怖城(ホワイトゾンビ)』が最初とされる。その後、1968年ゾンビ映画の金字塔となるジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が誕生! こちらの元ネタは、1957年に書かれた小説『地球最後の男』。(2007年『アイ・アム・レジェンド』として映画化。)ここで初めて、ゾンビに噛まれた者もゾンビになるという設定が作られた。その後もエド・ウッドの『プラン9』、80年代に入ると、前述のキョンシーを有名にした『霊幻道士』、サム・ライミの『死霊のはらわた』、『ナイトオブ〜』のパロディ『バタリアン』、90年代にもクエンティン・タランティーノの『フロム・ダスク・ティル・ドーン』、1996年には後に映画としてもシリーズ化されるゲーム『バイオハザード』が発売された。2000年代に入ってからダニー・ボイルの『28日後』(ゾンビが恐ろしくスピーディー!?)ドラマでも、『ウォーキングデッド』が大ヒット。日本でも『東京ゾンビ』、『カメラを止めるな!』等の名作が生み出された。2019年にはロードムービーの大御所ジム・ジャームッシュまでも『デッド・ドント・ダイ』を作ってしまった!

というわけで、約1世紀に渡り絶え間なく我々はゾンビに魅了されてきた...何故に?! まず、単純なところで昨今のゾンビ映画については、鮫映画同様、様々なバリエーションが作りやすいという点が挙げられる。前述しなかったB級ゾンビ映画の中には、鮫・ビーバー・寿司・新選組・恋愛物『ゾンビミーツガール』・歴史物『高慢と偏見とゾンビ』...等など、悪ふざけにもほどかあると言うほど乱発されている...。

かつてのゾンビ映画では、ベトナム戦争・公民権運動・全体主義...。最近の作品でも放射能・ウィルスといった社会背景も投影されてきた。

さらには、身近な人がある日豹変してしまう恐怖、敵も味方も一般人、死へのタブー...等、実は奥深い気も...。ゾンビ学と名打った本も数多く出版されている。

描いたのは、1993年のサム・ライミ監督『キャプテン・スーパーマーケット』! あの『死霊のはらわた』シリーズの3作目なのだが、前2作とは関係なく、スーパーマーケットの店員がアーサー王の世界にタイムスリップして、ゾンビ軍団と闘うというトンデモ映画!

最後に、全国のゾンビファンに朗報! 広島市横川では、毎年ハロウィンに〈ゾンビナイト〉を開催!(はや10年目!)ゾンビの仮装をして行くと、いろいろ特典あり!

なぜかしらゾンビ好きなの初映画風来松