3. 鬼

初回で物の怪に含まれると述べた怨霊は、目に見えないという意味で隠(オン)と呼ばれ、さらに転じてとなった。前回の百鬼夜行百鬼は、全ての人々に災いをもたらすモノとされた。

最古のは、奈良県〈元興寺〉のがごぜ。飛鳥時代、僧形で童子を攫った。ただ、この話が載る『日本霊異記』は平安時代の著なので、記された最古となると、奈良時代の『出雲風土記』にある、阿用の郷に現れ農夫を喰った一つ目の。『今昔物語集』にも人喰い鬼の話があり、『白玉か...』で有名な『伊勢物語』の鬼一口もある。また、描かれた最初となると、飛鳥時代〈玉虫厨子〉の『施身聞偈図』の、羅刹

その羅刹は、裸体に褌という姿。鎌倉時代『北野天満宮縁起絵』に描かれた獄卒も、現代ののイメージに近い。筋骨隆々の巨体、縮れ毛に、角と牙、虎皮の褌、突起の付いた棍棒。色は、〈五行説〉や〈五蓋説〉からと言われる五色。丑寅(鬼門)に現れる。

やはり、中国から入ってきた仏教ののイメージとなっていったようだが、元々中国では「死者の魂」の意味で普通の人や悪人の死後の姿とされる。(これに対しは偉人の死後の姿!)

歌人で評論家でもある、馬場あき子の著書『鬼の研究』では、❶祖霊・土霊系❷山伏・天狗等の山岳信仰系❸邪鬼羅刹夜叉等の仏教系❹盗賊・無法者等の人鬼系❺怨恨・憤怒等による変身系...と、分類している。

その正体としては、金工師、蝦夷、異国人等の説がある。また、原型はナマハゲスネカ等の来訪神とも考えられる。

主なとしては、日本三大妖怪大嶽丸酒呑童子(上記でいうと❹)、手洗い鬼三吉鬼疫鬼餓鬼牛鬼...。昔話にも多く登場する。『一寸法師』、『こぶとり爺さん』、そして『桃太郎』!

『桃太郎』縁だという愛知県、香川県、岡山県には鬼ヶ島、鬼の城、鬼の岩屋等があり、岡山県には祭にもなっている温羅がいる。

比叡山八瀬の村人は、かつて最澄が使役していたの末裔だといい、役小角に仕えた前鬼の子孫も旧前鬼村に住む。現在、唯一の名を冠する愛媛県鬼北町は、曽我兄弟の部下であった鬼王・團十郎兄弟が由来だが、こちらはどうも人のようだ...。

描いたのは、昔話『大工と鬼六』。これ、岩手県の民話とされているが、元はノルウェー王オーラヴ2世の『オーラフ上人の寺院建立』という話らしい! 詳しくは、またの機会に。

邪鬼が踏む大和盆地の暑さかな角川春樹