人の力や自然法則を超えて起こる出来事。
仏教では霊験、イスラム教ではカラーマ。
イエスの、人を生き返らせる、パン+魚✕5000、水上歩行…。モーセの出エジプトでの河割り…等々。キリスト教では、教会法に基き厳格な手続きの下、確認・承認される。
13世紀のスコラ学のトマス・アクィナスは、我々人間に知られている秩序と、神のそれがあり、後者を奇跡とした。一方、14世紀の哲学者スピノザは、自然法則は既に神意なのでその侵害は矛盾しているとして、奇跡を否定した。
キリスト教の奇跡の中で特に多いのが、聖母顕現である。これまで数千件の報告があり、そのうち24件が承認されている。
最も古いものが、40年10月12日、スペイン・サラゴサのピラールの聖母。聖母マリア存命中唯一の、そして最初の顕現とされる。12使徒のひとり聖大ヤコブが異教の地で落胆している所に、天使を引き連れ、柱(ピラール)の上に顕現。1723年承認され、ヒスパニック世界の守護聖人とされている。
その後の3大奇跡を紹介する。
まず、1531年12月12日、メキシコ・テペヤクの丘のグアダルーペの聖母。インディオのファン・ディエゴの前に顕現。彼の叔父の病を癒し、教会に届けるようにと、花とマントを与えた。花はメキシコには存在しない、しかも冬なのに開花しているカスティージャのバラ。マントには聖母の姿が映し出されていた。また、彼の叔父の前にも顕現し、自分の名を「コアトラロープ」と告げた。これは「石の蛇を踏みつける聖母」という意味で、蛇とはアステカのケツァルコアトルと考えられる。この地には元々、アステカの女神トナンツィンも祀られていた。またグアダルーペの聖母の肌は褐色なのだが、褐色の聖母はエジプト等、世界各地に存在する。おそらく、キリスト教以前の神と結びつけられたのだろう。グアダルーペの女神はインディオ達の信仰の対象となり、今でもメキシコではガイコツやフリーダ・カーロと同じくらい、そこいら中に見られる。また、マントも現存し、サボテン生地で作られた物にもかかわらず、全く劣化していない。調査によると、浮き出た像の中には後から書き足された物もあり、それらには劣化が見られた。が、元々の聖母の部分は色褪せず、使われた染料も特定出来ていない。また、その瞳の中にファン・ディアゴらが映っている事も発見された! 彼は2002年に聖列された。
次は1858年12月11日、フランス・マッサビル洞窟付近のルルドの泉。ルルドの聖母。14歳のベルナデッタ・スピルーの前に「無原罪の御宿り」と名乗る聖母が顕現。最初はそれと気づかなかったが、18回に渡り現れた。聖母の示した泉には治癒の力があった。1903年ノーベル賞学者・アレクシス・カレルも調査し、奇跡を目の当たりにした。(彼はこの事が原因でフランスにいられなくなり、アメリカの〈ロックフェラー財団〉へ。その後、あのリンドバークとの共同研究で、人工心臓を完成させた!)泉ではこれまでに、2000回以上の奇跡が起こり、68件が承認されている。ベルナデッタも1933年聖列。1921年には、ルルドの聖母象がある教会で、教会勢力の弱体化を狙った爆破事件が起こるが、聖母像は無事だった。
最後は、1917年5月13日、ポルトガル・ファティマ。ファティマの聖母。羊飼いのルシア・ドス・サントス、フランシスコ・マルト、ジャシンタ・マルトの3人子供の前に顕現。3つのメッセージを伝えた。一つが、地獄の存在。(3人はトラウマ級の恐ろしい光景を見せられたという)2つ目が、当時起こっていた世界大戦の終結と、新たな戦争の勃発。3つ目は、教皇暗殺。(これは1960年まで秘密にするようにと言われ、実際2000年になり漸く公となった!)3人は一時、反教権主義の政府により拘束された! 更に、翌年1917年10月13日、集まった7〜10万人の目の前で、太陽が狂ったように回転し、熱を発するという現象が10分に渡って起こり、新聞でも報じられた。ただ、撮られた写真の太陽には異常は見られなかった。集団ヒステリーや、集団催眠とも言われるが、18km離れた場所からの目撃もある事から否定されている…。
キリスト教では、奇跡を二度起こした人物は聖人に列せられる。近年では、マザー・テレサや、ヨハネ・パウロ2世が認定されている。ただ、こちらの認定はそんなに厳しくは無いらしい。
祈る人泉湧かせし聖母生む風来松