鬼熊長野県木曽谷。『絵本百物語』に載る歳を経た熊の変化。夜更けに山から人里に降りてきて、牛馬を攫って山へ連れ去り、これを喰う。巨体で直立する。怪力で、鬼熊が落としたという巨石〈鬼熊石〉が谷に残る。享保年間に退治されたが、毛皮は畳6畳もの大きさだったと言う。
水熊石川県加賀手取川中島。『三州奇談』。かつて中川堤に、正体不明の黒い皮のような塊が出現。枝のようなものが2、3本突き出ているだけで全くうごかず、生き物がどうかも分からなかった。ある時、流れてきた椰子の実をそれが食った事で、生きていると判明。村人が火を付けて、鍬を打ち込んだ。その途端、洪水が発生! 水害が相次ぎ、それが川下にゴロゴロと転がり去って、漸く収まった...。一説には、『山海經』にある中国の水神・天呉だったとも言われる。
海外では、『スラヴ神話』に地球・家畜・冥界の神ヴォーロスがいる。ロシア語で熊の忌み名「毛むくじゃら」の意。熊を呼び寄せることを恐れ、ロシアには熊を意味する固有名詞はない。他にも「メドヴェーチ=蜂蜜を食べるもの」とも。
『ギリシア神話』では、月の女神・アルテミスの侍女カリストが、ゼウスに愛されたことで妃ヘラーの怒りを買い(よくあるパターン)、熊にされる。その子、アルカスと共に、おおぐま座・こぐま座となった。
アイヌでは、熊を異なる世界の神や、知恵・豊かさの象徴と考えられている。
UMAでは、2021年、福島の山中に犬との交配種と思われるベアドッグが現れたが、どうも普通の犬だったらしい...。
さて、冒頭に挙げた鬼熊のような巨大ヒグマは、北海道等に実在する。
2015年紋別で捕らえられた熊は400kgもあった! 通常、200〜300kg、体長2mといったところ。
こうなると、先頃世間を賑わせた〈OSO18〉を避けては通れない。2019年〜2023年にかけて、北海道標茶から羅臼にかけて、66頭の家畜を殺傷した。ほとんど人前に姿を現さず(写真でさえ4枚のみ)、熟練ハンターの待ち伏せや、罠にもかからないことから、「忍者熊」とも呼ばれた。唯一2019年に目撃されたオソツベツの地名と、残された前足の幅18cmから、〈OSO18〉と名付けられた。2022年に入り、それまで放牧地のみであったが、牛舎や民家にも近づくようになる。
ただ、8月に気性の荒い乳牛〈リオン〉との争いで負傷したと思われ、その後鳴りを潜めた。〈リオン〉は傷を負ったものの生き残り、その角に〈OSO18〉の毛が付着していた!
そして、騒動は思わぬ結末を迎えた。それが、〈OSO18〉の肉だと判明した時には、既に誰かの胃袋の中にあったかもしれない...!
2023年7月30日午前5時。釧路町仙鳳跡村オタクパウシの放牧地で、ハンター(役場の職員の学芸員)が熊らしき物を発見。車を降りて距離を取って3発発砲。なんと初めての獣に対しての射撃だったが、見事頭部に命中! 頭蓋骨はバラバラになり、牙以外は処分された。肉は、業者の手に渡り、一部は食用肉として加工後に流通。釧路市内では味噌煮込みとして、東京のジビエ専門店では炭火焼きとして、手足は中国人が買い取って言った。釧路の通販業者は28万円で買い取りネットでも普通に売られたが、そのうちこれが〈OSO18〉の肉だと判明した途端に高騰した...。今時らしく、殺処分した事に対して抗議の電話が殺到した。
〈OSO18〉だと分かるまで時間がかかった要因としては、生息地と考えられる場所より10km離れた場所に出現した事、あまりにも無防備に人の前に姿を現した事等がある。また、怪物として伝説化してしまったが、そのサイズは普通の熊同様2mちょっとだった(もっとも、かなり痩せてはいたらしい...)。DNA鑑定の結果、〈OSO18〉と確定、公表となった。
実は、明治時代以降、エゾジカ等の減少によりヒグマは、木の実・セリ・ヤマブドウ等が食料の大半を占める草食となっていた。ただ、近年ハンターによるエゾジカの不法投棄(2022年では100頭以上)等が原因で、食性が変わったのではとも言われる。その為か、体重300〜400kgの個体も増え大型化してきている。〈OSO18〉がいなくなった後も、大型の熊の目撃や、被害も出ており、第2、第3の〈OSO18〉が生まれている可能性は高い。まさに、彼らは人間が生み出した怪物と言えよう...。
OSO18いや鬼熊よ愛
い奴よ風来松