2008年、イングランド・ウェストランカーシャー・オームスカークの住人、マイク・ノーランは〈Google Maps〉上で自分の町のすぐ隣にアーグルトンなる町があるのを発見する。天気・不動産・求人といった情報も多数リストアップされていた。しかし、翌年そこを訪れてみると、何も無い空き地が広がっていた…! このニュースは、瞬く間に世界中で注目を集めたが、その年の9月に訂正され、現在マップ上で見ることは出来ない。これは、マップ盗用対策の為に仕掛けられた罠である〈ペーパータウン〉や〈トラップストリート〉といった類のものではと言われているが、〈Google〉は認めていない。。ニューヨークのキャッツキル山地にあるアグローもその一つで、これをモデルにした、2008年のジョン・グリーンの小説『ペーパータウン』は、ベストセラーとなり、映画化もされた。
世界最古の地図は、紀元前600年のバビロニアのものとされる。紀元前150年にはキリシア(現トルコ)で、哲学者クラテスが地球儀を作成。2世紀、古代ローマのプトレマイオスの〈球体説〉に基づく世界地図は、天体観測による緯度・経度も記され、大航海時代まで使用された。1154年、ノルマン王ルッジェーロ2世が、アラブ人の地理学者ムハンマド・アル=イドリースィーに、世界初の正確な世界地図を作らせる。1570年、ベルギーの地図製作者アブラハム・オルテリウスが、近代地図帳『世界の舞台』を出版。ただ、この時期、海洋探検が盛んになり多くの地図が作られたのだが、そこには不確定な情報、噂、伝説までが取り入れられた。この地図帳も例に漏れず、存在しない多くの島が描かれている。
前回のアトランティス、以前『幻の島』にも書いた聖ブレンダン島・フリスランド・ハイ・ブラジル・サンニコフ島・ガマ島…地図にはあるが、実在しない島は数え切れない。逆に実在するのに地図から消された島もある。今はウサギの島として観光客が押しかける広島の大久野島は、日本軍による毒ガス製造が行われていた為、戦時中の地図にはない。同様の事が、現在ロシア等でも行われている…。かつては地図にも現実にも存在したが、現在はないという島もある。400年以上地図に記載されていたユカタン半島のベルメハ、オーストラリア・ニューカレドニア西のサンデイ島等がそれで、海面上昇等により水没したと考えられる。
さて…上記の物とは、一線を画す地図もある。それらは、作成された時代では考えられない正確さや、まだ発見されていない場所が記されている為、オーパーツと考えられる。その最たる物が、ダシュカストーン。1999年ロシア・バシュコルトスタン地方で発見された42×6cmの巨大な石板で、ウラル山脈周辺の地形が正確に刻まれていた。なんと、1億2000万年前のものだという…! 有名なのは、ピーリー・レイースの地図。1929年イスタンブールの〈トプカプ宮殿〉で発見されたもので、1513年オスマン帝国の海軍提督ピーリー・レイースにより描かれた。イベリア半島・アフリカ大陸・ジパング…アメリカ大陸が描かれた物では最も古い。南極大陸までもが正確に描写されている!
他にも、インフディ・イベン・ベン・ザラの地図・ハミー・キング・チャールの地図・キングハメイの地図…等が挙げられる。
日本では、現存する最古の地図となると『行基図』。日本地図の原型と言われ、江戸時代まで長く使用された(実際に行基が作ったわけでは無さそう…)。そして、地図と言えば伊能忠敬の『大日本沿海輿地全図』。あまりに詳細で正確だった為、江戸幕府は隠匿した。1821年フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが帰国時に持ち出そうとした(シーボルト事件)。この通称『伊能図』が一般庶民の目に触れるようになったのは、幕末になってからである。
描いたのは、鶴田謙二のマンガ『冒険エレキテ島』。亡くなった祖父の日記から、太平洋を彷徨う地図にない島の存在を知った主人公・御蔵は、複葉機〈ソードフィッシュ〉を駆り、猫のエンデバーと共に冒険の大空へ飛ぶ。
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