日本では、ヤマイヌ=狼に対して、イエイヌ=犬といった。15000年以上前に狼から分化して犬は誕生した。
イスラエルでは、仔犬を手にして埋葬された12000年前の遺体が見つかっている。
古代メソポタミアや、古代ギリシャでも、彫刻や壺の絵に犬がいる。古代エジプトでは、リードをつけて歩いているレリーフが! 最古のものは、5000年〜9000年前のサウジアラビアの壁画。
エジプトでは、犬は死を司るアヌビス神と死者との仲介役だ。メソアメリカや古代中国でも同様に冥界への案内役。地獄には三ツ首の番犬ケルベロスもいる。ゾロアスター教で、神聖視される一方、ユダヤ教・イスラム教・ヒンズー教では、不浄・邪悪な存在とされる。
日本では、縄文時代の遺跡から埋蔵された犬が発掘されている。〈日本犬〉の祖先〈縄文犬〉だ。『日本書紀』には、日本武尊が悪神の使いの白鹿を殺した後、道に迷ったのを助けたのが一匹の白い犬だった...とある。鎌倉時代には〈犬追物〉で九尾の狐退治の練習台にされ、南北朝時代には畑時能の愛犬・犬獅子が共に戦場に出た。戦国時代には伝令犬として駆け、江戸時代には〈生類憐みの令〉でなぜだかチヤホヤされ、現代ではピッチャーにボールを運んだりも!(広島カープのボールドック・ミッキーくん♡)とにかく、日本人は犬と共に歩んできたらしい。江戸時代の頃までは食べていたが...。
妖怪では、かわいいのからいくと岡山県のすねこすり。雨の夜、足の間を擦りながらすり抜ける。犬神は、憑き物筋。九州・四国に多い。犬を首だけ出して土に埋め、飢餓の一念が極まったところで首を撥ねて作る。外法故に平安時代には禁止令が出され、近年まで犬神つかいの血筋は差別されてきた。元は弘法大師・空海の描いた魔除けの犬の絵だとか、源頼政が退治した鵺が成ったものだとか、あの九尾の狐が変じた殺生石の破片から生じた...等と言われる。
送り犬は全国に話がある。山道でぴったりくっついてくるのだが、転ぶと襲ってくる。送り狼も同様。
外国では、黒犬(ブラックドッグ)=ヘルハウンドがいる。古くからイギリス全土に現れる魔犬で、これをモデルにコナン・ドイルは『バスカヴィル家の犬』を書いた。他にも、フランスのジェヴォーダンの野獣や、中国のシイ等もいるが、これはまたの機会に。
それは 暗い嵐の夜だった。「私のこと愛してる チャック?」CHARLES M.SCHULZ/谷川俊太郎訳