「金」だと、「きん」だか「かね」だか分からないので、敢えて「銭」とした。この漢字、「薄い刃の鋤」という意味で、かつて中国の貨幣がそんな形だったらしい。中国といえば、タカラガイも貨幣として使用していた事から、お金に関する漢字には「貝へん」が付く。〈貝貨〉は、現代でもニューギニアのトーライ族で使用されている! 『ギャートルズ』に出てきた石のお金、〈石貨〉もある。これもミクロネシアのヤップ島では1931年まで造られていた。大きさは、30cm〜1mで、主に冠婚葬祭等の贈答用だった。
さて妖怪では、金霊(かなだま)。赤か青色に光りながら、唸りをあげて飛ぶと言われ、これが入った家は裕福に、逆に出ていくと落ちぶれるという。この点は座敷わらしに似る。山岡元隣『今昔語評判』には、薄雲のようなものを刀で切り落としたところ、銭が零れ出たが拾えはしなかったという。鳥山石燕『今昔画図続百鬼』には、善行に努める家に現れるとあり、山東京伝『怪談摸摸夢字彙(かいだんももんじい)』にも正直者の家に訪れるとある。似て非なるものに金玉(かなだま)というのもあり、滝沢馬琴『兎園小説』では、空から落ちてきたと思われる光る鶏卵のような物とあるので、隕石か。江戸時代の鉱山書『山相秘録』には、黄金の精で地下に埋まっているとある。なんと、水木サンは、これを見たことがあるらしく、巨大な空飛ぶ十円玉のようだったと言っている!
昔話には、米一粒入れると金になるどんぶりとか、金の出る石臼だとか、米一粒噛むと金を生む片目の赤子という話まであるが、どれも最後は欲をかいて失敗するという、おきまりのパターン。
外国ではアイルランドの妖精レプラコーンがいる。W・B・イェイツは、この名前は「片足靴屋」を意味すると書いている。『グリム童話』の『小人の靴屋』もこれ。虹の袂にある隠された金貨の場所を教えてくれるという。
悪魔マモンは、元々「富・財」の意。「七つの大罪」の一つ「強欲」とされ、金銀を大地から抉り出す術を人に教えたとされる。英語の「拝金主義=mammonism」もここから。
神では、商売繁盛の大黒天、弁財天(鎌倉の〈銭洗弁財天宇賀神社〉では、奥宮の霊水でお金を洗うと何倍にもなって返ってくるという!)、恵比寿(栃木の〈大前胡神社〉は宝くじの当選祈願として有名)…。インドのガネーシャも現世利益をもたらすとして人気がある。ベトナムには、盆に燃やす紙幣〈冥銭〉がある。南米ボリビアの〈エケコ人形〉も、身体に紙幣を巻き付けているものがある。これは、欲しいものを人形に付ければ叶うという事らしい。
お金が貯まるアイテムとしては、筆者も子供の頃よく財布に入れていたヘビの抜け殻、赤い財布や、がま口の財布。〈招き猫〉は右手で金運を引き寄せる。中国では金のカエル、ブタ、財宝を食べるという神獣・貔貅(ヒキュウ)…等。
筆者愛読のマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』では、お金がどんどん増える呪いミラグロマンというエピソードがあった。これで増える紙幣のナンバーは末尾が13。呪いを解く方法は、他人に増えた紙幣を破壊してもらう事で、今度はその人に呪いが移る。
そういえば、昔、謎の印鑑が押されている紙幣を見つけた事がある。価値のある物かと思ったが、調べてみると大量の紙幣を数える時の目印等で、海外の金融機関ではよくある物らしい。紙幣と言えば、随分前にヨーロッパの通貨が〈ユーロ〉に統一されてしまって、各国のオリジナル紙幣がなくなり、がっかりした(筆者は金銭には無頓着な貧乏人だが、硬貨や、紙幣は旅行に行く度に収集している)。そういえば、最近〈1セントコイン〉も製造中止になると聞いた。なんでも、1セント作るのに37セントかかるらしい! それにしても、世の中はキャッシュレスとか、電子マネーとかが幅を利かせ、ますます現実感が失われていっている気がする…。
さて、最後になるが銭と来たら『銭形平次』! お〜と〜こだった〜ら〜一つにか〜け〜る〜♪ 野村胡堂原作、1966〜84年までテレビ時代劇として放映され、888回はギネス記録! オープニングのラストに映る、香川県観音寺の砂の上に描いた巨大〈寛永通宝〉を実際に見に行った時には感動したものだ。しかし、平次役が大川橋蔵から、風間杜夫にバトンタッチした時は全然ダメだ…と、子供心にさえ思った…。その平次親分の6代後の子孫が、絵に描いたご存知『ルパン三世』の銭形のとっつぁんこと、銭形幸一! 警視庁の警部だが、〈ICPO〉に出向中。柔道5段、タバコは〈しんせい〉、銃は〈コルトガバメント〉。好きな物はラーメン・演歌・『ダーティーハリー』!
座待月祖母と毎週見し平次風来松