8. 狐

2022年、北海道日本ハムファイターズの〈きつねダンス〉が大ヒット! ノルウェーの曲『The Fox』の歌詞は、「キツネはなんて鳴くの?」というもの。日本では古来「キツ」「ケツ」、『遠野物語』では「グェン」、アイヌでは「パウ」と鳴く。

西欧では16世紀にイギリスで始まった、キツネ狩りでのキツネの賢さからだろう、トリックスターとして扱われる事が多い。

一方、アジアでも女に化けたり、使い魔だったり。逆に神使という存在としては稲荷信仰=お稲荷さんがある。農耕神穀霊神とした五穀を司る宇迦之御魂神の使いとされる。やはり、ネズミを捕る事からだろう。神仏習合で、インドの荼枳尼天と習合されたが、彼女が乗るジャッカルが「射干」といい、これが日本では狐になり別名の「野干」となった。元々、日本では平安時代頃までは蛇神信仰が盛んだったのだが、渡来人・秦氏の稲荷信仰が、田の神の信仰とも結びつき拡大していった。稲荷神社は827年従五位下、942年正一位に。また、狐もその少し前に、〈命婦〉の格を与えられている。今では主祭神だけでも、約3千の稲荷神社が全国各地にある。

『日本霊異記』には、欽明天皇の世(540〜571)に、関東の野中である男が出合い夫婦となった美しい女が狐だった話が載る。正体がバレたが、男は「いつでも来て寝よ」といった事から、「来つ寝」と言うようになったという。また、二人の間にできた子は長じて強力として有名となった。この手の美しい女が実は狐で正体を明かし去り、その子は異才を持つという話は多くある。

安倍保名と、狐の葛の葉の間にうまれたのが安倍晴明というのは、よく知られる。彼女は障子に『恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太こ森の恨み葛の葉』と書き残して去った。

おさん狐の話も、大阪府・鳥取県・広島県...と、各地に伝わる。嫉妬深く美女というのは同じだが、例えば広島市江波の狐は齢80。500匹の眷属を従え伏見に位を貰いにも行った。終戦頃まで、その子孫がいたという。一方同地の別のおさん狐は、ライオンに化けたりして人を驚かせたりしていたところ、ある職人に捕らえられる。大名行列に化けるからと許してもらうのだが、翌日現れた行列が実は本物で、喜ぶ職人は打首に...というひどい話!

愛知県には人に憑くおとら狐がいる。これに限らず、関東から北の地では、オサキくだ狐といった、狐憑きの話が多くある。

ほかにも、狐の嫁入り狐火等もあるし、宮沢賢治や新美南吉の童話にも、よく登場する。

狐の格としては、まだ修行中の野狐仙術を得た仙狐、最高位が白狐とされており、その中でも日本三大妖怪の一つにも挙げられている、金毛玉面九尾の狐は世界も時代も股にかける、面目躍如のまさに大妖怪! が、これについては、また改めて...。

絵は松本大洋『竹光侍』より。

公達に狐化けたり宵の春与謝蕪村