306. 鯉

お察しの通り〈広島カープ〉ファンである。このチーム名は、1949年球団発足に尽力した政治家・谷川昇が命名した。〈広島城〉は〈鯉城〉と呼ばれ、太田川にも昔から鯉がいたのだろう。また、己斐という地名もあり、これは神功皇后が、長門への熊襲征伐の際に立ち寄り、その時に県主が大きな鯉を献上したことに由る。もちろん、復興への想いも込めたのだと思う。

「こい」の由来は、体や味が「肥えている」事からと言われる。生命力が強く、寿命は15〜20年。稀に70年を越す個体も! 古くから食用とされ、縄文時代の貝塚からも発見されている。江戸時代には、安産や産後に良いとされた。欧州・東欧では聖なる食材とされ、クリスマスイヴに食されている。

では妖怪は...というと、たくさんいる! まず、ゴードン・スミスが『日本怪談集』に記した輝兜魚(てるとうお)。出雲松江の赤松池で、子のない夫婦が授かった人の姿で生まれた鯉。また、前にも書いた『仙境異聞』の寅吉が、仙界で見たという千山鯉(せんざんり)。中国でいう「登竜門」は、滝を登った鯉がになるが、ここでは千山鯉になるという。姿は有鱗四足で、アルマジロに似ている。他にも、和歌山今出の〈鯉の淵〉の主は、城主に食べられる前に、女性の姿で現れた。また、河内の〈内助が淵〉では「巴」と名付けられた鯉が、漁師との子を宿した。京伏見の〈恋塚(元は鯉塚)〉は、殺された鯉が妖怪となった。秋田〈黒沼〉の浮島にも巨大な鯉がおり、それを見てしまった者は一年以内に死ぬと言う...!

一方、鯉の神様。大阪豊中の〈鯉神社〉こと〈椋橋総社〉は、素戔嗚が鯉に乗って降臨したと伝わる。京亀岡の〈鯉明神〉こと〈大井神社〉は、木俣命が鯉に乗って登ってきたという。他にも、栃木等でも神使とされ、こういった地域では、鯉は食べず、鯉のぼりさえ飾らないと言う...。古代メソポタミアにおいても、淡水世界を統べるエンキの象徴が、スクルなる巨大な鯉である。

さて、絵に描いたのは、〈カープ〉のマスコット〈スラィリー〉。1995年の中日戦で、突如登場! その正体も、なぜ誕生したのかも謎?! あの『セサミストリート』の会社のデザインで、メジャー球団〈フィリーズ〉の〈ファナティック〉とは従兄弟らしい...。句の方は、2016年の25年ぶりのリーグ優勝を思い出して...。その瞬間、〈旧広島市民球場〉にいたのだが、あれ程の歓喜の渦というのは、これまでの人生で経験した事がなかったし、おそらくこの先も、もうないと思った...。だがしかし! その後、まさかの三連覇!〈バチカン〉に奇跡認定してもらいたいの〜!

奇跡は起こる地は赤に染む天に鯉風来松