436. 荒神
先日、何かのおりにTVで「コージン」と耳にして、かみさんと「荒神てなんの神さまだっけ?」という話になった。広島では「コージン陸橋」というキーワードをたんびに聞く。調べてみると、荒神陸橋だった。開かずの踏切といわれている愛宕踏切をまたいでいる。愛宕という事は…荒神もやはり火伏せの神だった。荒神町という町の名前にもなっており、江戸時代寛保年間(1741〜44)に大火事があり、今の荒神橋あたりに三宝荒神が祀られたのが由来らしい。
荒神と聞くとスサノオのような気性の荒い神というイメージが、まず思い浮かぶ。また、古くから日本各地で火除け・厨の守護神もこう呼ばれた。この神は、神道・仏教・修験道・山岳信仰・民間信仰…等が混ざり合って形作られた。
よく知られるのが前述の仏教の三宝荒神。如来荒神(にょらいこうじん)・麁乱荒神(そらんこうじん)・忿怒荒神(ふんぬこうじん)の三身。憤怒の形相で三面六臂。武器・法具を持ち炎を背負う。三宝というのは仏・法・僧の事で元々これらの守護神だった。炎で不浄を清め災厄を退ける事から、徐々に竈・厨の神として広まったようだ。「三宝さん」「荒神さん」とも呼ばれ、台所に神棚を祀ったり、札を貼ったりした。真言は「オンケンバヤソワカ」(「ケンバヤ」は地震の神剣婆か)。
また、産まれたての赤子の額に鍋炭(荒神墨)を塗ったり、「✖」・「犬」・「あやつこ」…等と描いたりする風習も、荒神の庇護による魔除け。これをすると河童の難から逃れられるという地方もある。
もう一つに地(じ)荒神=外荒神がある。こちらは、土地神・氏神。道祖神や境界神として、神社・祠の形で村の入り口や、屋敷の門等に置かれる。岩や森等も、これの聖域とされた。牛馬の守護や、海上の安全の守護という地域も。また飛鳥時代の渡来人・秦氏も大荒神大明神として祀られる。
全国で最も多く荒神を祀るのが岡山。広島・島根(特に隠岐)と続き、ここ愛媛・徳島・山口…と、やはり西日本に多い。西の方だけに火事が多いという事もなさそうだが…。
山陰では荒神が怒ると火車になると言い、福岡では荒神火に。佐賀には荒神狐…と、妖怪と関連付けられもしている。
筆者の大好きな本の一冊に石牟礼道子著『椿の海の記』がある。この中に石牟礼さんの「狂女」の祖母おもかさまが出てくる。神経を病んだ彼女には火の神荒神さまが憑いているという。そして気性の荒いこの神は「自分を無しにしてしまうようなやわらかい性の人間」のところに行く…と書かれている。
さて描いたのは、1986年イギリスのダイアナ・ウィン・ジョーンズ(J・R・R・トールキンやC・S・ルイスに師事)著『魔法使いハウルと火の悪魔』に登場の火の悪魔カルシファー。ジブリも『ハウルの動く城』として2004年映画化した。主人公ハウルとの契約により、彼と動く城に魔力を供給している。ハウルの心臓や、ソフィのおさげ髪等人体の一部を代償に大きな力を生み出すことができる。原作では「星の子」と呼ばれ、元は地上に落ちてきた流れ星だったが、ハウルが心臓をあげることで命を得た。この状態のままでいると二人とも心を失い化け物となってしまうのだが、言葉に魔力を込められるソフィにより契約は解除された。水とおだてに弱く「オイラ火薬の火は嫌いだよ。やつらには礼儀ってもんがないからね」となかなか素敵なセリフも口にしている。
埋み火の人の何かを喰みてをり風来松