175. 砂

砂と言えば、やはり砂かけ婆

奈良県で、神社の側や、人通りの少ない森等で砂を振りかける。同県、〈広瀬神社〉では、〈砂かけ祭り〉という雨乞い行事もあり、天理市には砂かけ坊主もいる。兵庫県西宮では、砂が降る音だけ。同県尾崎では、神社の鳥居をくぐると砂をかけられるという。共に、姿は見せない。多くの出どころは、柳田國男の『妖怪談義』からとも言われる。あの『ゲゲゲの鬼太郎』の砂かけ婆の容姿は、佐渡の〈鬼太鼓〉の面がモデルだと、京極夏彦は述べている。

砂かけ婆ではないが、砂をかけられる怪異は、日本全国に伝わる。福岡や愛知のそれの正体はだと言う。滋賀の草津追分町では砂ほり婆と呼ばれるが、これも正体はのあいの子だとされる。同じ滋賀の東近江市では、川から砂が投げつけられ、それに当たると足が立たなくなる等の体調不良を起こす。青森の津軽では、その名も砂まき狸。新潟の大面村は砂まき鼬。後ろ脚で砂をかけ、蝋燭の火を消すという。同県佐渡〈妙照寺〉の老狸は、配流された順徳天皇の子が訪れた際、道に砂をかけて清めた! 徳島・小桑島にもの仕業の砂ふらしがいる。香川の長尾では、かけられる砂は人には当たらないと言う。

砂というと、鳥取砂丘。(大学時代、創立記念日に、友達と二人、自転車で広島市から鳥取砂丘まで行った思い出がある)ここにも、かつて狼が住んでいたとか、砂丘で死んだ者の幽霊が出るといった話が伝わる。

砂漠…となると、数々の言い伝えや、怪異譚があるが、今頁ではゴビ砂漠のUMAモンゴリアンデスワームにのみ触れよう。現地名はオルゴイコルコイ。60〜1.5m程のサラミソーセージのような外見。巨大ミミズかイモムシのよう。1年のほとんどを地中で寝て過ごし、6・7月の雨季に地上にその姿を現す! 大変凶暴かつ、有毒で、遭遇すれば死は免れないといわれる。蒸気状の毒を吹き付けるとも、電激のような刺激を及ぼすとも…。1800年には、その毒によりロシアの調査隊、数百人が犠牲に?! 1926年から、アメリカの自然史博物館の動物学者ロイ・チャップマン・アンドリュース(化石ハンターとして有名)が5回に渡り調査。当時のモンゴル首相ダムディンバザルからの申し出だった! その後も1990年にはチェコのUMA学者、2005年にはイギリスの動物学ジャーナリストが調査を行っている。インド〜パキスタンのタール砂漠や北アフリカにも、よく似たUMAがいると言われる。

砂…というと、少し前に行きつけの映画館〈シネマルナティック〉で観た、1928年のサイレント映画『風』も思い出した。都会から、砂嵐吹き荒れるテキサスの大平原に嫁いだ女の話だった…。

描いたのは、安部公房『砂の女』。子供の頃、TVで映画版を見て、ちょっとトラウマになった…。「砂の女」が岸田今日子だと、大人になって気付いた時もショックを受けた!
『「砂」というのは、むろん、女のことであり、男のことであり、そしてそれらを含む、このとらえがたい現代のすべてにほかありません。だが、小説を書きあげても、「砂」はまだ私をとらえたまま、はなしてくれようとしませんでした。』安部公房『砂のなかの真実』より

斑猫を追い砂女すなめすなめす風来松