神・霊・精霊・死霊等と交信する事で託宣・予言・治病・祭儀等を行う呪術者。召命・世襲・修行等でなる。脱魂や、憑依を行いトランス状態となる。日本では巫者・巫女と呼ばれる。語源はツングース語の「呪術=saman」と言われる。
古くは、『日本神話』の天孫降臨や、天岩戸の場面で踊った天之鈿女(アメノウズメ)、天照大神、倭迹々日百襲姫(ヤマトトトヒモモソヒメ)、神功皇后、鬼道を用いた邪馬台国の卑弥呼もシャーマンだったと思われる。
海外でも、チグリス川上流から12000年前のシャーマンと思われる女性が発掘されている。
現代においても、我が国でよく知られるのが、恐山のイタコ。オガミサマやオナカマ等とも呼ばれる。オシラサマを遊ばせ、仏降ろし・神降ろし・憑き物祓い・悪魔祓い・虫封じ等を行う。語源は、「斎く」や、アイヌ語で「神がこう仰った」、「言葉」を意味する「itak」等と言われる。(ここから名前を取った俳句結社が北海道にある。)盲目の女性がなる場合が多い。
沖縄・奄美にもユタ(語源は「おしゃべり」を意味する「ユンタ」か)、ノロが。これもやはり、多くは女性。アイヌのトゥスクル(「振動する人」の意)は、部族の長について助言を行う要職で男性。女性は別にトスメノコという巫女がいる。
もちろん、シャーマンは世界中に存在する。アフリカ、北米インディアン、インドネシア、ハイチの〈ブードゥー教〉、南米ペルーやメキシコでは、アヤワスカやマジックマッシュルームといった幻覚作用を及ぼす飲食物が用いられる。北欧のサーメのノアイデが降ろす際に歌われるのが、〈ヨイク〉だ。サーメに関わらず、天之鈿女命の例にあるように、音楽や舞踏はここから始まったのかも知れない。また、サーメではドラムも用いる。グリーンランドのアンガコックでも同様。
ところで、これまで述べてきたシャーマンは、地域差こそあれど、やはり女性が多い。実は、北米インディアンには女装をする男のシャーマン、ベルダーシュがいる。ベーリング海の島々やアフリカでも見られる。古代ヨーロッパの神官にも同様の例がある。日本でも、近代以降の新宗教の教組...例えば、〈天理教〉の中山ミキ、〈立正佼成会〉長沼妙佼なども、やはり女性だ...。子を産むと言うことが、生死、ひいては神に繋がるということなのだろうか...。
さて、アジアにもシャーマンは多い。モンゴルでも、太鼓を打ち鳴らして精霊オンゴドを憑依させる。善神により幸福を招くバリアーシと、悪霊により災厄を招くボーとがあり、女性はオトガンと呼ばれる。スターリン時代に弾圧されたブリヤート人から2000年代に入り広まり、今や国民の一割がシャーマンだという...! ちょっと、社会問題にも発展してしまっているらしい...。
中国の出馬仙は、アニミズム色が強く、狐・蛇・鼬等の動物の霊を降ろす。
台湾のタンキーは、福建省・潮州省から入ってきたものだ。シンガポールやフィリピンの華人社会でも重要な役割とされている。女はアンイイと呼ばれる。やはり、巫病というトランス状態となるのだが、この際自分の舌を傷つけ、この血で神語を記すと護符となる。打城法事を行い、亡くなった霊を地獄から救い出す。また、三年に一度の迎王祭では疫病の神王爺(ワンイエ)を降ろし、巨大な船が一日かけて練り歩き、最後はそれを燃やしてしまう。先日、テレビの『クレイジージャーニー』で、オカルト研究家・吉田悠軌が取材していて、その中で普渡三公という神を降ろしたタンキーの映像を見た。58度の高粱酒を一気飲みしたり、何時間も一度も瞬きをしないといった、信じられない内容だった...。三公を降ろすために、何人ものポールダンサーがセクシーに車の上で踊っている光景にも驚いたが...。
さて、長くなってしまったので、最後に広義にはシャーマンとされる霊媒師について触れる。『聖書・サムエル記』にも、サウロが口寄せの女を探すよう求める場面があるが、古代イスラエルや、その後の〈キリスト教〉でも、霊媒師が行う降霊は、悪魔や悪霊を降ろすとされ禁じられてきた。1848年になって漸くアメリカ・NYのフォックス姉妹の降霊によって、復活。その後、コックリさんの頁で触れたテーブル・ターニング等を行う降霊会が流行した。
そういえば昔流行った映画『ゴースト/ニューヨークの幻』でも、ウーピー・ゴールドバーグが霊媒師をやっていた。世間は感動の渦に巻き込まれたのだが、筆者はウーピーが憑依させた死んだデミ・厶ーアと、主人公のラブシーンで笑ってしまった!「それ!ホントはウーピーよ〜!」内容は陳腐だったが、最後に出てきた影のような悪霊は怖かった。あと、ラブシーンで2人が陶芸のろくろを回すというのがあって、これだいぶん後になって、三木聡監督が、和製『ツイン・ピークス』というべきテレビドラマ『熱海の捜査官』で拝借し、若き二階堂ふみにやらせてた!
すっかり脱線してしまったが、天之鈿女命といい、タンキーのポールダンサーといい、この話題にお色気は欠かせない要素らしいのでご容赦頂きたい。絵に描いたのは、大好きなジャニス・ジョプリン! この俳句を見て、彼女以外思いつかないのだが、どうだろう?
シャーマンのごとき歌ひ手星月夜川越文鳥