396. バミューダトライアングル

恐ろしい猛暑が続いている…。仕事柄、服装は自由なので、七分丈のズボンで出勤している。先日、服を買いに行った際、新しいのを探したが、もう七分丈は無く、膝上の半ズボンのみだと言われる! そういえば、巷を歩いている男は誰もそんな風だ。〈バミューダパンツ〉か…。と、言うわけで、満を持してのバミューダトライアングル。もう風化している感もあるが、敢えて今回やってみた。

バミューダトライアングル。バミューダ諸島・フロリダ半島先端・プエルトリコを結んだ広さ約130万平方キロメートルの三角形の海域。100年以上前から、100〜300ともいわれる船舶や飛行機、1000人以上が行方不明となっている。消息を絶つ前にコンパスや計器に異常の兆候がある事や、残骸や遺体が見つからないケースが多い等、謎が多い…。

代名詞となっているのが、フライト19事件。1945年12月5日、アメリカ海軍の〈アヴェンジャー雷撃機〉5機14名がこの海域で消息不明に。1964年、作家ビンセント・カディスがこの事件を雑誌『アーゴシー』に、初めてバミューダトライアングルと命名して記事を書き、世に知られるようになった。この日は〈バミューダトライアングルの日〉に制定されている。その後、1974年、アメリカの言語学者にして、超常現象研究家のチャールズ・ベルリッツの『The Bermuda Triangle』が世界的ベストセラーとなり、一大ブームとなる(彼は以前取り上げたフィラデルフィア実験ロズウェル事件の著書も出している)。

ただ、実はここは名付けられるずいぶん前より知られていた。最後の記録は1942年、あのクリストファー・コロンブス! この海域で方位磁石の異常に気づいている。1881年には、無人で彷徨う船が発見され、1913年には米海軍〈サイクロプス〉、1963年には米空軍給油機〈KC135〉、同年には大型タンカーが消息を絶っている。今世紀に入ってからも、貨物船、小型機、大型船…と、絶え間がない…。

1989年、アメリカのタブロイド紙『ウィークリー・ワールド・ニュース』に載ったのがサンチアゴ航空513便事件。1954年、西ドイツ〈アーヘン空港〉から飛び立ちバミューダトライアングルで行方不明になったロッキード社の飛行機が、ブラジルの〈ポルドアレグレ空港〉に突如現れ着陸。機内から、乗員乗客92名全員の白骨死体が発見されたというもの! また、同紙はパンアメリカン航空914事件も報じていて、こちらは1955年行方知れずとなった航空機が、1992年カリブ海の空港に着陸。なんと、こちらは、乗客乗員は行方不明になった時のそのままの姿で、生還したというのだ! 実はこのタブロイド紙、ジョークや風刺パロディ専門らしい…。

それらとは違って、実際この海域を経験し生還したという人物もいる。そのうちの1人がチャップ・ウェイクレー。1964年、彼は飛行機の翼が発光し、計器が狂ったと証言している。また、別の人物は、飛行機が白く光る雲か霧に吸い込まれるのを目撃したという。ポーランドのアレクサンダー・ドバは2017年〈ナショナルジオグラフィック・アドベンチャー・オブ・ザ・イヤー〉を受賞した世界的海洋冒険家で、カヤックでの三度の大西洋横断に成功している。彼はバミューダトライアングルで嵐に見舞われ一ヶ月以上脱出出来なかったという。日本人の海洋冒険家、白石康次郎も「それまで凪で穏やかだったのが、10分後には大嵐になるような天候の激しい海域…」と言っている。

さて、では一体、バミューダトライアングルには何があるのか? 超常現象説では、ブラックホール、次元・時空の裂け目宇宙人海の怪物…等と言われる。もちろん、これらには何の根拠も無く、懐疑派は別の海域で起きた事件・事故までバミューダトライアングルに結びつけているとか、特にこの海域での事故が突出しているわけではないとまで言っている。ただ、確かにここはハリケーンや竜巻の多発地帯で〈三角波〉が起こりやすい。バミューダ諸島には危険な石灰岩の岩礁も多く、また500億tの磁鉄鉱により磁気は異常をきたす。大量の藻類が発生している〈サルガッソ海〉もある。最近では、メタンハイドレードによる大量のメタンの泡や、メタンの爆発による大穴が原因という説が言われている。

バミューダトライアングルによく似た海域は、実は日本にもあり、千葉県野島崎・小笠原・グアムを結ぶドラゴントライアングルと言われ、前述のチャールズ・ベルリッツも著書に紹介している。それによると、1950年〜1954年に9隻の船が痕跡を残さず消失。元ネタは、読売新聞や朝日新聞と思われ、前者の記事には「海の神秘と結びつけ、原子力時代における怪談すら誕生しかけている」とある。どうやら、その頃封切られた『ゴジラ』も意識していたらしい…。その他にも、台湾にもフォルモサトライアングルというのがある。

話はこれで終わりではなかった…! なんと、バミューダトライアングルの水深600mの地点で、巨大なピラミッドが発見されたというのだ…! 底辺300m高さ200mというから、あのクフ王のものより大きい…。しかも、ぶ厚いガラスか、水晶か、水のような質感で、堆積物や藻にも覆われず、透き通っているという…。更に上部に2つの開口部があり、ここから大量の海水を吸い込み、大波や渦、霧を発生。これが、バミューダでの事故の原因だというのだ…! 俄に信じがたく、映像もフェイクだ、いや本物だと議論されている。確かに大西洋や、ユカタン半島、バハマ沖等で、同様のピラミッドのものが幾つか見つかってはいる…。

さて、最後にバミューダ諸島について。イギリス領のこの島々は、実は一人当たりのGDPが世界1位になったこともある、金融と観光の土地だ。1500年、島を発見したスペインの探検家ファン・デ・ベルムーデスにちなんで命名された。その当時も、その100年後イギリス人が入植した時も、島には誰も住んでいなかった! というのも、この辺りは頻繁に嵐に見舞われ、危険な岩礁も多く、何より島は悪魔精霊の不気味な声に包まれ、「悪魔の島」と呼ばれていたからであった! 何のことはない。ここは人々がバミューダトライアングルと名付ける前から、いわく付きの島だったのだ…! さて、句に詠んで絵に描いたのが、その悪魔の声の正体〈バミューダミズナギドリ〉。この悪魔とて人が住み始めると食料として乱獲され、絶滅の危機に陥るのだが。

バミューダトライアングルとて水薙鳥の薙ぐ風来松