46. 魔女

三角帽子に黒マントの鉤鼻の老婆、大鍋でトカゲの黒焼を煮て、夜になれば箒で空を飛びサバトへ。5月1日のヴァルプルギスの夜には、ブロッケン山等に集う。そんなところが、現代の一般的な魔女の姿だろう。

この観念は中世ヨーロッパの〈魔女狩り〉以降に定着した。古くは、旧石器時代の洞窟壁画に描かれている〈シャーマン〉が起源とも考えられる。神や精霊の力呪術を行うとされたが、本当は医学や薬学に長けた知恵者。だいたい、村はずれに住む女だったと思われる。

ただ、そうした知恵や能力がキリスト教の教義には邪魔だったのだろう。彼女ら(一部、男もいた。特にアイスランド・モスクワは多かった)は、悪魔と契約を結び人々に災いをなす存在とされてしまった。

悪魔と交わり、魔女となった彼女らは、身体の何処かに痛点を持たない契約の印があり、水に沈めても浮かび、黒猫を使い魔とし、カラス・フクロウ・ヘビを召使いとするとされた。15世紀から17世紀までの長い間、集団ヒステリー的な〈魔女狩り〉で11万人が裁判にかけられ、そのうち4〜6万人が処刑された。その中にはあのジャンヌ・ダルクも含まれる。18世紀に入り、啓蒙思想と自然科学の広まりにより、漸く衰退した…。ただ、驚くことに現代でもインドにおいて、この20年の間に魔女とされた女性が3千人も亡くなっているという話もある…!

ルーマニアのチャウシェスクの妻は魔女の占いに頼っていたらしく、またアドルフ・ヒトラーとゲッペルスはヴァルプルギスの夜に自害した…。

神話の中にも魔女は多く登場する。古代エジプトの女神イシス魔女の元祖と言われる。『ギリシャ神話』にも、魔法呪文の女神ヘカテ、アイアイエー島に住み膨大な薬学・薬草学の知識を持ち、人を動物に変えて家畜とするニュンペー魔女であるキルケー、英雄譚や悲劇で知られるキルケーの姪メーディア…。

『スラブ神話』のバーバ・ヤーガは子供を食べる恐ろしい魔女。森の中に、鶏の足のついた小屋に住む。(サーミの高床倉庫がモチーフとも言われる)ただ、彼女もキリスト教化の折に魔女にされたパターン。バリのランダも人に災いをもたらす、痩せて舌を出した老婆の姿。シヴァ神の妻ドゥルガーの化身で、善の神獣であるバロンと終わりのない闘いを続けているという。

創作でも、描いた角野栄子の『魔女の宅急便』シリーズは、ジブリのアニメでも有名。アニメと言えば、『魔法使いサリー』等に始まる、いわゆる「魔女っ子」ものも数多く生み出された。海外ドラマにも『奥様は魔女』があった。

現実の世界でも、1951年〈魔女禁止令〉が廃止されたイギリスにおいて、ジェラルド・ガードナーが『今日の魔女術』を著し、〈魔女宗=ウィッカ〉が生まれている。

金雀枝を物色中は若き魔女風来松