160. 船魂

船玉船霊十二ふなだまオフナサマ…等とも。海の民が航海の無事を祈る船の守護神続日本書紀延喜式に載る。

船を造る際、帆柱の受材である筒の下に御神体を入れる。船下しの日に行われ、「ごしん」・「お性根」を入れると言う。将棋の駒のような形の箱に、男女一対の人形・女性の髪(大工の妻女の物とも。これを提供した少女も船霊ササギオフナサマと呼ばれの具現とされる)・五穀・十二文銭(かつては寛永通宝を水引に通した物だったが、現在は五円玉等。イノシシ神である十二様船魂十二神・十二ヶ月等の由来が言われる。閏年は十三銭)・サイコロ(底で繋がっている二つの賽で、「天1地6表3合わせ艫4合わせ櫓櫂5と5で2どっさり」という目の向き、粘りのある柳や流木などで作られる)・櫛・化粧道具・鋏…等を入れる。全く入れない地域もあるし、瀬戸内では髪の毛は入れなかったりもする。不漁や、水死人を拾った場合(黒不浄)は、マン(ゲン)が悪いとし、船魂を入れ替えることもある。昔は、巫女が入っていた!

これらの事からも察せられるように、船魂は、女のである。「船魂」=「女陰」ともされる。女一人で船に乗る等は赤不浄として、タブーとされた。また、乗り始めには、船主の妻娘を乗せ海に突き落とす地方もある。

船魂は、嵐や大漁等の吉兆を知らせるとされ、「ジージー」や「チンチン」と音をたてる。これを、「イサム」・「シゲル」・「ハズム」等と言う。

また、正月2日や11日、大漁時等には、船魂祭を行う。大日如来住吉大明神金毘羅権現水天宮恵比寿等が、船魂神として陸の神社に祀られもする。

船に魂が宿った例として、最も有名なのが、江戸時代、徳川秀忠が造らせた、日本一巨大な軍艦安宅丸。廃船が決まった際、「伊豆へ行く!」と叫びひとりでに出航。三浦で捕らえられ廃船にされたが、その後も船の叫び声がしたという。更に、その廃材を穴蔵の蓋にした家の下女に取り憑き、本所深川に塚が作られ漸くおさまった…。船魂に入っていたのは16cm程の狐に跨る荼枳尼天だった。

中国の媽祖も、航海・漁業の守護神。西洋でも、船首像(Figurehead)には精霊が宿るとされる。バルト海・北海のクラバウターマンは、船の座敷童的存在でこれがいる船は沈まないという。60cm程の黄色いフロックコートを着た子供のような姿で、手に持った木槌で甲板を叩いてイタズラをしたり、船の危機を知らせる。マンガ『ワンピース』にも登場した。

船玉のたける暁漁始め風来松