339. ハナアルキ Rhinogradentia

1941年。日本人捕虜収容所から脱走したスウェーデン人、エイナール・ペテルスン・シェムトクヴィストは、南太平洋アイアイ群島に漂着。外界より隔離されたその島で、独自の進化を遂げた生物を発見した。モグラ・ハリネズミ系統より分化したと考えられるそれらは、鼻を歩行したり、捕獲したりすることに使用。多くの群で四肢は退化していた。見つかったのは全14科189種。学名はRhinogradentia鼻行類・別名ハナアルキ

しかし、発見から数年後、外来者からの流感が持ち込まれた事で、その島の先住民も、ハナアルキも絶滅! しかも1957年、ある国の核実験の際の下級職員のミスにより、なんと島自体が海没…。ハナアルキ研究者ハラルト・シュテンプケの観察記録だけが残された。彼の死後、その遺稿を友人のドイツ人学者、ゲロルフ・シュタイナーが纏めた物が、1961年『鼻歩類』として出版された。

そこには、中生代白亜紀にいた原鼻類、水中に生息する管鼻類、4〜6脚の鼻を持つ多鼻類、18脚の鼻で音楽を奏でる長吻類地鼻類跳鼻類…等が記されていた。跳鼻類ダンボハナアルキ属は、その名の通り巨大な耳で飛翔する!

実はこれ、偽書ならぬ、有名な奇書! 思考実験とも、学術論文の完成度の高いパロディとも言われ、作者のゲロルフ・シュタイナーは動物学者である。荒俣宏は『世界大博物図鑑』の中で、『フランスでこの種が認められないのは、大統領シャルル・ド・ゴールが、巨大な鼻を持つ自分への当てこすりであるとして、〈パリ植物園〉への鼻行類の搬入を拒否した為。』と書いている。

さて、この『鼻行類』と共に、日本で〈世界三大奇書〉と呼ばれる本がある。一つは、まだ記憶に新しい、1981年ドゥーガル・ディクソンの『アフターマン』。作者はスコットランドの地質学者・サイエンスライター。人類滅亡後(5000万年後)の地球を支配する生物群が描かれた。肉食齧歯類ファランクス有蹄兎類ラバック巨大ペンギン・ヴォーテックス袋猿チュカブー…。『みんなのうた』ではアニメ化もされた。ただ、筆者はこの本、ちょっと不気味で怖かった…。

もう一冊は、1967年に出た『平行植物』。作者はなんと、『スイミー』のレオ・レオニ! そこには、『時空のあわいに棲み、われらの知覚を退ける植物群=La botanica parallela』が。イロメキコダイホウゲツキノヒカリバナ七指の灯台夢見の杖森の角砂糖…。(日本語訳も素敵!)それらは、人が触れるとたちまち崩壊したり、突如出現したり、写真に写らなかったりするという。

ところで、実は何故か『鼻行類』の旧版にのみ併録された種属がある。海をも越える飛行能力を持つジェットハナアルキである! ひょっとして、この種だけは島から逃れて生き残っているのではなかろうか? それを悟られないよう新板からは削除された…?

ハナアルキハムハムツキノヒカリバナ風来松