110. 空飛び猫

CAT WINGS翼猫とも。その名の通り、翼を持つ猫。

『ゲド戦記』のル・グウィンがは『空飛び猫』のシリーズを書いていて、村上春樹の翻訳で出版されている。T・S・エリオットの『CATS』に登場するマキャベティは羽はないが、空を飛ぶ。水木サンの『悪魔くん』の悪魔十二使徒の一人(一匹?)にも、こうもり猫がいる。

空飛び猫は実在する。

欧州では19世紀から所有権が争われた記録が残り、20世紀になるとサーカスで公開された。日本でも、1826年駿河国有渡郡小鹿村にて捕獲。1867年には閻魔大王を祀る東京新宿の〈大宗寺〉で、イギリス人・イカステキが見世物に。その後なんと、町中で脱走して行方不明になった! 1884年にも宮城県桃生郡馬鞍村で捕獲。虎のように吠えたと『奥羽日日新聞』に載る。19世紀末から20世紀にかけても、イギリス各地で捕獲、展示。1959年アメリカ・ウェストバージニア州パインズビル山中で発見された23cmの羽をもつ“トーマス”は、所有権を巡り裁判となった。今世紀に入ってからも、ロシア・クルスク村で迷信深い村人に溺死させられたり...と受難が続く。

実はこの翼、〈猫皮膚無力症〉による奇形で空は飛べない。同様のものは、人間、馬、犬にもでき、〈エーラス・ダンロス症候群〉という。中国でこれらは天使猫と呼ばれ、今も縁起物として高額で取引されている。世界で100例程だと言われる。

そうえば、アメリカ・フロリダ州キーウェストにも、かつてアーネスト・ヘミングウェイが飼っていた六本指の〈ヘミングウェイキャット〉の子孫たちが50匹程いる。

どこにいる、どんな猫達も幸せに暮らせますように。

木の葉時雨空飛び猫の2、3匹風来松