380. 超能力

現在の科学では解明できない、通常の人間には不可能とされる事象を可能にする能力。学術的には〈超心理学〉と呼ばれる。アメリカの超心理学者・ジョゼフ・バンクスラインは、ESP(超感覚的知覚)と呼び、念力PKとした。オーストラリアの生物学者、ベアトルト・バウル・ヴィーズナーは、まとめてPSIという名称を考案。ギリシャ語で、「心」「魂」を意味する「Ψ」に由来。

霊感第六感・キリスト教の奇跡・ヒンドゥー教のシッディ・仏陀の神通力等、時代や国によって呼ばれ方は様々。

主な種類は、テレパシー透視千里眼予知念視サイコキネシステレキネシス空中浮遊テレポーテーション念写ヒーリングパイロキネシス…等。

大抵は、トリックか、手品か、知覚の錯覚による誤認等と言われるが、これまで人類は歴史の中で、こっそりと大真面目に超能力に取り組んできた…!

2009年『ヤギと男と男と壁と』という映画が公開された。原作はその数年前に出版社されたジョン・ロンスン著『実録・アメリカ超能力部隊』。この本によると、60年代のアメリカで、ベトナム戦争でトラウマを負った軍人により生み出されたのが、武力で敵を傷つけない愛と平和の軍隊第一地球防大隊! 睨んで羊の心臓を止める、壁をすり抜ける、サブリミナルにより捕虜に自白させる…等の研究が行われ、911後には活発化していたという。

実際にアメリカでは、幾つもの超能力計画が実施されてきた。その一つ〈MKウルトラ計画〉は、1950年から1960年まで〈CIA〉と、〈タビストック人間関係研究所〉が極秘裏に実施していた洗脳実験。前身は拷問やマインドコントロールを研究していた〈ペーパークリップ作戦〉。1973年当時の〈CIA〉長官・リチャード・ヘルムズによりほとんどの記録が破棄されたが、辛うじて残されたものが1975年アメリカ連邦議会で公開された。それによれば、計画は朝鮮戦争での中国による米軍捕虜の洗脳が注目されていた1953年にスタート。1964年の冷戦下では〈MKサーチ〉と改名され、ソ連のスパイの尋問の際、超音波で記憶の消去を行ったという。後に1990年の映画『ジェイコブス・ラダー』や、2012年『陰謀のセオリー』、日本でも同年のアニメ『LUPIN the Third 峰不二子という女』等で描かれた。

これとは別に1970年冷戦下のアメリカ陸軍の極秘計画が、〈スターゲイト計画〉である。軍事作戦に、遠隔透視能力を使用。その能力を持つジョゼフ・マクモニーグルや、テレキネシスのリン・ブキャナン等、多くの超能力者が所属した。〈スタンフォード研究所〉で1994年まで試行されたというが、もちろん公式には一切言及は無い。

これらアメリカの行動は、東側の超能力研究をまとめた『鉄のカーテンの向こう側の超能力研究』なる本が出版されたことによる焦りと思われる。実際、ロシアの公式機関誌『アルメイスキー・スボールニク』に、1960年から80年にかけて、国防省に〈超兵士育成プロジェクト〉が存在したとある。1980年、口頭での会話によらない尋問メタコンタクトが研究されたり、その際イルカを使ったテレパシー交流が行なわれたと書かれている。また、80年代末には、〈№10003〉が創設され、欧米諸国とのサイキック戦争のプログラム分析、エネルギーや情報による攻撃や防衛を目的とした。91年にはミハイル・ゴルバチョフが、キジルクム砂漠に部隊を派遣し、エイリアンとの接触を試みた!? 03年解体。現代に蘇らせようという話もあるが、〈ロシア科学アカデミー〉は否定している。

フィクションの世界では、数多くの作品で超能力は描かれてきた。その最たるものが、絵に描いた映画『スター・ウォーズ』のフォースだろう。近年ではX-メンシリーズ。日本のアニメでも、石ノ森章太郎の『幻魔大戦』や、『機動戦士ガンダム』のニュータイプが思い出される。漫画ではリアルな超能力バトルを描いた大友克洋の『童夢』・『AKIRA』、そして超能力を可視化した荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドは、革命的だと言われる。

では、現実には超能力というのは、ただの絵空事なのだろうか? 良く言われる「人間は脳の10%しか使用していない」というのは、ただの都市伝説らしい。一方でテレパシー透視ヒーリング等は、脳障害・量子・電磁力・ホルモン…等により存在する可能性はあるとも言う。現在常識だと思われ、現在科学で証明されている物だけが真実だというのも傲慢に思われる…。

最後に天文学者のカール・セーガン博士の言葉を引用して締めくくりとしたい。

『我々がやるべきことは、結論に飛びつきたくなる気持ちをグッとこらえ、宙ぶらりんの状態にもじっと耐えて、証明あるいは反論の証拠が出るのを待つことである。』『カール・セーガン科学と悪霊を語る』より。

春泥やマスター曰く「SIZE MATTERS NOT」風来松