1. 物の怪

人に憑き苦しめたり、病気にさせたり、死に至らせたりする怨霊死霊生霊妖怪や、変化を指すことも。

ただ、その定義は時代を遡るほど広義になる。元来「モノ」は人間の対義で、全ての無生物・超自然的存在(鬼・精霊・荒魂...)というのが本義である。

これが平安時代になると、『延喜式』では、災い・祟りを引き起こす悪神を「モノ」とし、対して人・生物に安泰・幸福・恩恵をもたらす側を善神としている。

『源氏物語』の六条御息所の生霊が、物の怪である。また、『枕草子』・『紫式部日記』にも、物の怪を〈よりまし〉と呼ばれる女中や小童に憑かせて病を治した話が載り、『続日本後紀』には、皇居内の物の怪に対し六十人の僧侶が読経したとある。

何年か前に、やっとコロナが沈静化したので、念願だった広島県三次市に2019年オープンした、〈三次もののけミュージアム〉=〈湯本豪一記念日本妖怪博物館〉を訪れた。江戸中期の三次を舞台とした怪談話『稲生物怪録』がメインだが、他にも源頼政の退治の錦絵や、『百鬼夜行図』の柄の着物、広島県五日市(筆者がかつて住んでいた)に落下した雷獣の絵や立体模型等、充実の展示内容だった! 屋外にひっそり展示されていた、 大正時代の蒸気機関車8620型(通称ハチロク)は『鬼滅の刃』に登場した無限列車のモデルなので、もし行かれた場合はお見逃し無く。

2021年には、三次市と、小泉八雲の島根県松江市、そして水木しげる御大の鳥取県境港市を結んで〈もののけ怪道〉とし、盛り上がりを見せている。

水木サンは、あまり物の怪という言葉は使わなかったが、2008年リメークされたアニメ『墓場鬼太郎』のオープニングは、〈電気グルーヴ〉の『モノノケダンス』で、なかなかクールだった!

というわけで、始まりました『百句百妖漫録』。妖怪と銘打っておりますが、扱いますは、今回取り上げました物の怪全般でお送りいたします。いざ、お見知り置きを!

小春日に物の怪遊山あの世まで風来松