たいていの妖怪は、タバコを嫌う。この煙が、妖力を無効化するという。そういえば、『蟲師』のギンコも、蟲除けの煙草をいつも咥えている。
狐狸に化かされないように持ち歩くという話は、各地にある。猟師は悪獣除けに使用、タクシー運転手も幽霊除けに持つという。大蛇も嫌うというのは、落語の『田能久』でも有名。貝原益軒の『大和草木』にも、『蛇はヤニを付ければ変色して死ぬ』とあり、蝮の毒消しになるとも。また、南方熊楠の『十二支考』にも、毒蛇をヤニで退治する南部アフリカの〈コイコイ人〉が載る。ただ、これ、科学的根拠は無い。
西洋においても、魔女や精霊は、タバコを嫌う。火が関係しているからだろうか?
ただ、彼らの中にも、数少ない愛煙家はいる。まず、徳島三好の化け狸・大煙管。吉野川の難所・青石瀬にいて、舟を泊めていると「煙草をくれ」と大きな煙管を差し出す。やらないと船を沈められるが、これに入る煙草の量は四十匁×十袋なので、気安く差し出せる量でもない…。お次は、煙管坊。山に現れる作業着姿の坊主頭で、やはり煙草をねだってくるのだが、1本やると箱の中が全て無くなってしまうという!正体は狐と思われる。最後は、アイヌに伝わるキムナイヌ(山にいる人)。人に似るとも、一つ目とも言う。タバコを持っていると寄ってくる。熊も手掴みで殺せるほどの怪力だが、タバコを差し出せば危害は加えず、仕事を手伝ってくれる事も。風のない日に、木を倒す音が聞こえるのもこれの仕業という。キムンセタという猟犬を連れていることもある。ただ、禿頭の事は言ってはならない。
古事記の鹿屋野比売、日本書紀の草祖草野姫が、煙草の神。
さて、タバコだが、最古の物は7世紀マヤ文明の〈パレンケ遺跡〉にある、エルフマドールが咥えているレリーフ。この神はタバコの煙で大地を清めたという。南米では、タバコは神話にもよく登場し、儀式や占いでも使用された。北米インディアンでも同様。部族間の輪を結ぶ儀式でも使われる。欧州へは、クリストファー・コロンブスが、日本へはポルトガル宣教師が伝えた。巻きたばこは、クリミア戦争や、エジプト・トルコ戦争で発明されたと言われる。
歴史上の人物に、ヘビースモーカーは多い。アルバート・アインシュタイン、ココ・シャネル…ダグラス・マッカーサーはパイプのイメージ。葉巻といえば、ウィンストン・チャーチル、チェ・ゲバラにフィデル・カストロ。画家では、パブロ・ピカソ、ジャクソン・ポロック。映画でも、『カサブランカ』のハンフリー・ボガート、『ハスラー』のポール・ニューマン、『夕陽のガンマン』のクリント・イーストウッド…と、懐かしい姿が思い浮かぶ。最近では『ダイ・ハード』のブルース・ウィリス。『紅の豚』のポルコ・ロッソ。『刑事コロンボ』のピーター・フォークも! うちのかみさんは大の嫌煙家だが、唯一チョウ・ユンファのたばこを吸う姿はカッコいいと言っていた。ちなみに、フィルム映画の切り替え時の黒丸印は、〈シガレットバーン〉と言う。
日本では、伊達政宗、平賀源内(世界初のライター〈刻み煙草用点火器〉を発明)、作家では芥川龍之介・太宰治・中原中也は〈ゴールデンバット〉、夏目漱石はやはり〈朝日〉を吸っていたらしい! 近年では、松本清張か。政治家では、葉巻の吉田茂。
さて、描いたのはタバコといえば…『ルパン三世』の次元大介! 銘柄は、アメリカの〈ポールモール〉。ルパン三世はフランスの〈ジタン〉、峰不二子はアメリカ〈モア〉、銭形は〈しんせい〉。筆者はタバコは吸わないので、良くは分からないが、おそらくもうどれも売っていないのでは? しかし、愛煙家にとっては、つくづく生きづらい世の中になってきたなぁ…。最後に、句にも詠んだが次元から一言。「俺はただ美味いタバコが吸いたいだけだ。」
涅槃西風うまいタバコが吸えりゃいい風来松