321. ハギス

〈haggis〉。スコットランドの伝統料理。羊の内臓のミンチを、オート麦・玉ねぎ・ハーブ等と共に羊の胃袋に詰め、茹でるか、蒸すかした物。誕生日や、送別会、正月等によく食される。シングルモルトウイスキーをかけることも。1月25日は〈バーンズナイト〉と呼ばれ、詩人ロバート・バーンズの『ハギスに捧げる詩』と共に、ハギスが供される。起源は、ローマ時代まで遡る。〈ハギス投げ〉なる競技も!

が…実は、このハギス、世界の中でもマズい料理のひとつとして知られる。2005年、フランスのシラク大統領が、ロシアのプーチン大統領、ドイツのシュレイダー首相と会談した際、「ハギスのようなひどい料理を食べるような連中は信用ならない。」と発言。さらにこれに対して、当のイギリスのストロー外相が「ハギスに関してならご尤も。」とコメントし、国民の怒りを買った。また、同年、エジンバラでの〈G8〉でアメリカのブッシュ大統領も「ハギス料理が出される事を懸念している」とのジョークを飛ばしている。

しかし、各国首脳も知らない秘密がある…。実はこのハギス、腸詰等ではなく、その正体は絵に描いたれっきとした動物なのだ(グラスゴーのケルビングローブ博物館に展示されている)。スコットランド・ハイランド地方にのみ生息。丸っこく、猫より少し小さいくらい。足は3本で、左右の長さが違うため、一方向にしか走る事ができない。右足が長い種と、逆のそれがいて、同種同士がカップルとなる。これが交尾する時に出す声を元に、〈バグパイプ〉の音色は作られた。全てのハギスの先祖ヘブリディアン・ハギス、足の長さが均等なルイス・ハギス、希少種ゴールデン・ハギスが存在する。好物は、ジャガイモ・カブ・ヘザー・ブルーベリー・ハエ(!)。逆に、ショートブレッドは彼らにとって毒となる。天敵は、あのネッシーで、捕まって食べられたりする! スコットランドでは、年末に〈ハギスハント〉なる行事があり、ハギスを捕まえて食べて1年の健康を祈る。ただ、このハギス、スコットランドの空気と水でしか生きられず、更にはその姿も満月の夜、心の綺麗な者にしか見えない!

筆者は、かつてスコットランドのアイラ島を訪れた際、ハギスを恐る恐る食べてみた…。が!意外に美味しくて、土産にまで買って帰った。この正月にロンドン出身の友人が帰省するというので、ハギスを頼んだ。さて、彼にはハギスを見ることが出来るだろうか…? 

〈駄目だった! 心の美しさ以前に、2019年より検疫が厳しくなっていていた…〉 

ハギスムーン心のきれいな人にだけ風来松