コロナ騒動も収束し、そろそろ海外旅行に行きたいと考えている。その候補の一つがモンゴルだ(円安なんでヨーロッパ方面は無理だし)。
この国にも妖怪的なものが、わんさかいる。チクトルが、悪魔・鬼・幽霊等を大きく指す言葉。その中で悪鬼・悪神はシムヌ、人や動物に化ける悪魔はサムル。
絵に描いたマンガスもしくはマンガタイは、最も良く知られる。幾つもの頭を持つ巨大な人喰い鬼。頭の数は、3〜25と話により様々。山奥に棲み、人里に降りてきて、家畜・財産・女を奪って行く。見えざる魔王シャルモル・カンの手下とも、古代インドの悪神ラクーシャサ=羅刹とも言われる。だいたいの話で英雄に退治される。
悪しき鳥モー・ジョボーも知られる。恋を知らずに死んだ美少女の霊。口を袖で隠して旅人を誘惑し、嘴で脳髄を啜る! 正体を見破った狩人が撃ち殺すと、みるみる骨と化した。これとよく似たのものは多い。不自然な死や不幸な人生を送った者の霊であるシュトル、淵に身を投げた女の霊のスニソ、子を産めず死んだ女の霊のアダは、1つ目の子供の姿で、動物に化ける。金属音や火が苦手。ゾードコールは寿命に至らず死んだものが、本来の寿命が来るまでの間になると言われ、人に取り憑く。憑かれた場合、ラマのお教により狼の頭に移して祓う。
子を攫って喰う山姥はミハチン・ショルマス。「遅くまで遊んでいるとミハチンが来るよ!」と使われる。ハル・ホルは兇猛な獣で、天頂に大きな目、虎縞。ローロンはゾンビ、エルリックは閻魔大王。
UMA ではオルゴ・イコルコイ=モンゴリアン・デスワームが有名。ゴビ砂漠に生息し、体長50〜150cm、体重10kg。毒液を出す。1800年代にはロシアが、1990年にはチェコも調査。多くの目撃談を収集し、実在の可能性は高いが正体は不明。ブータンと同じく雪男もいて、アルマス・フン・グレースと呼ばれる。全身毛に覆われ、舌にはトゲが生えている。怪力。男も女もいる。人間の異性を攫って、子を産ませる! 人間の子供も好きで、ゲルに忍び込み乳をやることもあり、これを飲んだ子は丈夫になるという。また、アダ(気鬱の病)に、アルマス(女)の肉が効くと、1717年に出された医学書に書かれている。
モンゴルと言えば、絵に描いた『スーホの白い馬』(1961年、訳・大塚勇三、絵・赤羽末吉)。訳とあるように、元は中国の『馬頭琴』という話で、更にこれもモンゴル自治区で歌われていた歌から作られている。その為、モンゴルの風習とは異なる点も指摘されている。物語の最後、死んでしまった馬から作られる楽器が〈モリンホール=馬頭琴〉。竿の先端部分に馬の彫刻があり、弦や弓は100〜180本の馬の尾の毛で作られている。筆者はここ数年で何度か、この馬頭琴とホーミーのライヴ(岡林立哉さん)に行き、その不思議な音色と歌にすっかり魅了された。いつか、満天の星空のモンゴルの草原で聴いてみたいものだ…。
夏草に流るる鬼や馬の歌風来松