322. ブータン འབྲུག་ཡུལ་

前にウモッカでも書いた高野秀行の、『未来国家ブータン』を読んだ。ブータンといえば、あの〈国民総幸福量=GNH〉の、2011年ワンチュク国王と美しきペマ王妃の来日も記憶に新しい、あの国である。そんなブータンに高野が何をしに行ったかといえば、生物資源調査にかこつけた、UMA探しだ!

まず、ブータンと言えば雪男。現地では、ミゲドレポグレポ等と呼ばれる。サムドゥプ・ジョンガ、ラヤ、メラ・サクテンの山奥に棲むと言われる。身長2〜2.5m(大きさは自由に変えられるとも!)、足のサイズは約30cm、指は4本、前身を長い毛に覆われている。爪先と踵が逆に付く(中国の野人、ベトナムのフイハイ、トリニダード・トバゴのドゥエン…等、妖怪によく見られる特徴)。山椒と腋臭の混じったような匂いを発する。好物は笹。雌はミゲム、小型のものはミチューと呼ばれる(このミチューのミイラがポプジカの寺院に残る)。古くから人に害をなす恐ろしい存在とされるが、人真似をしたのを逆手に取られ退治されるという話が多い。またルンタ・ギュップという、運が落ちた時に見る不吉な存在とも言われる。近年でも、ミゲと人との間に子が生まれたとか、これに連れ去られたという話が普通にある。

同様に、ロバのような姿のチュレイも、不吉な存在とされる。長い毛・赤い顔・黄色い目。「ヒューヒュー」や「オセアー」と鳴く。家畜のヤクを襲って食べる。熊よりも強いが、犬は苦手。

他にもブータンには、ブヨブヨしていて多くの触手を持つ吸血肉塊ステワ・ルトゥ、淵に棲む蛇の精霊である、岩場にいる赤い顔の神ツェン精霊界の白い顔の親玉ゲルポキョンシーのようなロランデログ、ミイラも残る魔女シム…等、魅力的な妖怪がわんさかいる! 1970年まで鎖国状態だったおかげか。毒人間=ドゥグ・ジェメという悪魔崇拝の一族もいて、前述のルンタ・ギュップの時に彼らに触れられると、病気になると言われる。また、ゲッパとよばれる首切り役人が、ダム建設のための人身御供を探して出没するという噂が国中に広まり、休校が相次いだというのは、ごく最近の話らしい!

絵に描いたのは、ブータン国旗。ブータンはチベット語で、国のゾンカ語では、「ドゥク・ユル=雷竜の国」。この白い雷竜は、王家の守護神で、その声は山々に響きわたるという。これを描いている2024年の日本でも、〈辰年〉が始まったばかりだ。図らずも新年の幕開けにふさわしい題材となった。

幸福の国ブータンに轟く冬の雷と龍風来松