4. 妖怪

狭義では、人々に災厄・恐怖をもたらす怪異な存在、現象。広義には、人智の及ばない異常な事物、現象。とはいえ、前者についてはそうとばかりも言えず、例えば座敷童のように、福をもたらしたり、人助けをする話も少なくない。全国各地の神社、お堂、祠、巨樹等に、祀られているモノも多くある。「勿怪の幸い」というのも、元は「物の怪の幸い」。

物の怪お化け化け物変化(へんげ)等とも。東日本ではモーモッコモモンガー、西日本ではガンゴーガガモガゴジ等と呼ばれる。

幽霊との違いは、特定の人を選ばず、特定の場所・時間に現れる。それは、辻・峠・村境・橋・門...。時間も、逢魔が時と呼ばれる明け方・夕方といったような、つまり境界である。幽霊は死んでいて実体はなく、あの世にいる人。一方妖怪は、生きていて実体があり、境界にいる人外と言える。

柳田國男は、妖怪の零落したものだとしたが、これもそうとばかりは言いきれないと思う。

漢字の「妖怪」の「妖」の方は、神憑りとなった巫女が、手を上げ髪を振り乱し舞う姿を表す。「怪」は、地の怪異、地妖。水脈、または地に伏せる、心といったところか。

元は、やはり中国の言葉で、妖怪は一世紀の「漢書」に、幽霊は五世紀の「後漢書」に初出。日本では、奈良時代の『古事記』・『日本書紀』・『出雲風土記』等にそれらしきモノの記述はあるが、「妖怪」の初出は平安時代の『続日本紀』。「幽霊」は同時代の『中右記』となる。その後、前に述べた鳥山石燕の『図画百鬼夜行』が江戸時代に描かれ、妖怪に姿や物語が与えられた。

明治時代になると、井上円了が『妖怪学講義』を記し、南方熊楠は山人について柳田國男と論争の末絶交、寺田寅彦も高知の怪音ジャン人魂鎌鼬等の考察を『怪異考・化物の進化』で論じた。

妖怪研究は現代に引き継がれ、小松和彦、多田克己らが。創作では、京極夏彦が小説を書き、我らが水木サンがキャラクター化を大量に行ない、妖怪の存在を世に知らしめた!

さて、絵はご存知、フィンランドのトーベ・ヤンソン作『ムーミン』シリーズのニョロニョロ。正体不明という意味では、なかなかに妖怪度は高いと思う。にしても、なぜここで北欧を持ってきたかというと、実はこの句の作者・眠女が、何を隠そうムーミン・トロールの声優、岸田今日子だからでした!

妖怪のふりして並ぶ冬木立眠女